「ヘルスツーリズム」という言葉を、聞いたことがありますか。
今回は、近年になって聞かれるようになったヘルスツーリズムとは何か、日本と海外でその定義や内容に違いはあるのかなどと合わせて、解説していきます。
ヘルスツーリズムってなに?
非日常的な時間である旅をきっかけに、または旅を通して、参加者の健康の回復・増進を図ろうという考え方を「ヘルスツーリズム」と言います。ウェルネスツーリズムの一種と定義もできます。
NPO法人 日本ヘルスツーリズム振興機構では、ヘルスツーリズムを以下のように定義づけしています。
- 日本ヘルスツーリズム振興機構による、ヘルスツーリズムの定義
-
健康・未病・病気の方、また老人・成人から子供まですべての人に対し、科学的根拠に基づく健康増進を理念に、旅をきっかけに健康増進・維持・回復・疾病予防に寄与するもの。
(参考:日本ヘルスツーリズム振興機構)
なおヘルスツーリズムには、自病など健康上の不安を抱える人が安全に旅行を楽しむためのものから、健康増進目的のものまで、以下のような種類があります。
- サービス面に配慮するもの
- 健康増進活動の一環としての旅行
-
- IT活用により、健康状態のチェックや管理、能力開発などを行う旅行
- 健康面に配慮したもの
要約すると、既に抱えている健康上の問題を解決したり、心身の調子を改善することを大きな目的として実施される旅行のこと、と言えそうですね。
日本と海外でどんな違いがある?
日本でヘルスツーリズムの考え方が登場したのは1990年代、明確に定義づけされたのは、2008年の観光庁発足に伴ってのことでした。
ニューツーリズムとも呼称され、各地域にある資源を活用できる観光形態として、観光立国推進基本計画で以下のように定義づけされています。
- 日本観光庁によるヘルスツーリズムの定義
- 自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復・増進・保持する観光形態
一方、海外では1973年に観光機関国際連盟(IUOTO)が、近代ヘルスツーリズムの概念を声明として発表しています。
その後、国連世界観光機関(UNWTO)が、改めて以下のように定義づけしました。
- 国連世界観光機関(UNWTO)によるヘルスツーリズムの定義
- 健康維持に関する養生法、エクササイズや食事管理、各種療法、医療サービスを通して肉体的、精神的に良好な状態に改善することを主要な目的としたリゾートデスティネーションへの転地やヘルススパ旅行
海外では、特定の温泉地やスパ施設に滞在し、そこで心身の状態を良好にするための施術や生活を送る旅行のことを、ヘルスツーリズムと位置付けているのです。
しかし日本では、ヘルスツーリズムを独自に解釈し実践してきました。
スパなどの中心施設を使っての養生というより、各地域が持つ財産を活かし、自然や食、温泉などで訪れる人に健康増進をはかってもらおうという意味合いが強いのが特徴です。
会社の研修や福利厚生にもおすすめ?
近年では、会社などの組織が従業員の研修、または心身の健康を促進する目的の福利厚生としてヘルスツーリズムを利用しているケースも見られます。
食事や生活の習慣を改め、心身をリラックスさせるのに非日常の時間・空間である旅行は、良い機会となります。
ここに着目し、従業員の考え方や健康への意識を変えたり、また組織全体の成果を上げる目的で、福利厚生にヘルスツーリズムを組み込む会社が増えているのです。
ウォーキングやスポーツ大会、ヨガ、瞑想、温泉を使った湯治や食事メニューまでさまざまなプランがあるので、調べてみると良いでしょう。
おわりに:ヘルスツーリズムとは健康の増進・回復・保持を目的にした旅行
温泉地での湯治や、心身の健康促進を目的とした瞑想体験やウォーキング、健康上の不安がある人へのサポートが組み込まれた旅行のことをヘルスツーリズムと言います。日本では2000年代に入ってから定義づけされ、各地の強みを生かし健康増進をはかってもらう新しい観光形態として独自に発展してきました。近年では、従業員への福利厚生の一環として取り入れる会社も増えていますので、興味がある人は調べてみてくださいね。
コメント