検査数値や、確認されている病気の有無・数に限らず、体や心の状態を含む人間全体を対象とした医学のことを「ホリスティック医学」と言います。
今回はホリスティック医学とは何か、その定義や目指すところ、大切にしている考え方などについて理解していきましょう。
ホリスティック医学って?
ホリスティックとは、ギリシャ語の「Holos(ホロス)」から派生してできた言葉です。
日本語で適切な訳語はありませんが、おおまかには英語の「Whole(ホール)」に近い「全体」という意味を持っています。
そしてホリスティック医学とは、人間の健康状態を体だけではなく精神、心、霊魂の状態、病の有無、老いや死まで含め全体的に捉え、医学的に対処しようという考え方です。
1960年代のアメリカにおいて、西洋医学に対する反省や批判から発生しました。
このためホリスティック医学では、単に検査結果の数値が正常値の範囲を超えているかどうか、また病気が確認されているどうかで健康状態を定義することはありません。
その人の肉体や精神の状態、老いや病の有無までが調和し、本人が人間としての尊厳を維持し続けられるよう医療・養生で支えることを本質としているのです。
ホリスティック医学の目指すものとは?
NPO法人 ホリスティック医学協会によると、ホリスティック医学は以下5箇条を満たすものと定義されています。
ホリスティック医学の定義
- ホリスティック(全的)な健康観に立脚する
- 人間は体、心、気、霊性などが統合した有機体であると捉えて、社会や自然、宇宙と調和した全体的な視点で健康を考える。
- 自然治癒力を癒しの原点におく
- 私たち生命がもともと持っている自然治癒力を原点と考え、治療においてはこれを高め、増強することを基本とする。
- 患者が自ら癒し、治癒者は援助する
- 病気は、あくまで患者本人が主だって治療するもの。治療よりも本人の意思による養生、ライフスタイル改善などの自己療法が優先。治癒者はあくまで本人の癒しを支援する立場。
- 様々な治療法を選択・統合し、最も適切な治療を行う
- 西洋医学だけでなく中国医学、インド医学など各国の伝統的な医療、自然療法、鋭意要慮法、手技療法、運動療法、心理療法などから適切な治療法を選択・実践する。
- 病の深い意味に気付き、自己実現を目指す
- 老いや病気、死をただ否定的で悲しいものと捉えるのではなく、その背景にある意味や生死のプロセスを理解し、より深い充足感を得ることを目指す。
※参考:「ホリスティック医学の定義 | NPO法人 日本ホリスティック医学協会」
要約すると、人の健康・不健康の対象を数値や目に見える状態にしやすい体の状態だけでなく、目に見えない精神や心、自律神経などの状態まで範囲を広げて考えること。
そして、西洋医学以外のさまざまな選択肢も踏まえながら、本人の心身が満ち足りた状態になるよう、患者が主体となり治療や生活を整えていくことを目指す。
医師や看護師、患者周囲の人たちは治癒者や支援者となり、一般的な西洋医学とは異なる方法やスタンスで治療や養生を支えていく医療のかたち、と言えるでしょう。
おわりに:人間の健康を肉体や精神、魂、生死や老いまで全体的に考え、本人が満ち足りるよう支えるのがホリスティック医学
1960年代、「統括的な」「全体的な」という意味を持つギリシャ語を語源に、ホリスティック医学の考え方は誕生しました。心身の一部、確認された病気や疾患のみを医師主導のもと治療する西洋医学への反省・批判から、ホリスティック医学は生まれたと言われています。その対象は、肉体や精神、魂、老い、病気、生死などを含む人間そのもの。心身の管理や治療を西洋医学とは別のアプローチで行いたいなら、有効的な方法でしょう。
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