何度か登山に挑戦して、宿泊を伴う少し難易度が高い山に挑戦したくなってきたなら、北アルプスの燕岳(つばくろだけ)を登ってみませんか。今回は燕岳登山について、山の概要や特徴・登山難易度はもちろん、日帰り登山の可否や宿泊登山の方法、季節に応じた必要装備までまとめて解説していきます。
燕岳(つばくろだけ)登山は北アルプス挑戦にぴったり
「アルプスの女王」と称される燕岳は、長野県大町市と安曇野市にまたがる標高2,763mの山です。
日本アルプスと称される山々のうち、北アルプスである飛騨山脈に含まれています。
- 日本アルプス、北アルプスとは
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- 本州を縦断するように連なる山域のことを日本アルプスと呼ぶ
- 1881年、イギリス人登山家のガウランドが日高山脈を「日本のアルプス」と称したことに由来
- 飛騨山脈は北アルプス、木曽山脈は中央アルプス、赤石山脈は南アルプスとなる
北アルプスに分類される飛騨山脈は、燕岳を含む常念山脈をはじめ以下の山々を有するエリアのことです。
- 北アルプスの山々
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- 白馬岳を有する後立山連峰(うしろたてやまれんぽう)
- 剣岳や立山を有する立山連峰
- 燕岳を含む常念山脈、槍ヶ岳を有する穂高連峰 など
車なら安曇野ICから中房線(R327)で中房温泉へ、公共交通ならJR大糸線・穂高駅より乗合バス、またはタクシーに1時間ほど乗って中房温泉登山口で降りれば燕岳です。
花崗岩でできた白い山肌が特徴で、登山のベストシーズンは気温が上がる7~10月上旬。
7~8月には以下のような高山植物が白い山肌に咲き乱れ、以降10月までは段階的な紅葉も楽しめます。
- 燕岳で見られる高山植物の例
- コマクサ、チシマギキョウ、ミヤマザクラ、ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲ など
燕岳は、多様な高山植物が見られることから、「花の百名山」にも選出されています。
道中では多彩な高山植物が、山頂では遮るもののない大パノラマの眺望が楽しめますが、その登山難易度は高めです。
ほとんど登山経験の少ない登山初心者が1人で踏破するのは難易度が高いでしょう。
しかし一方で、燕岳の登山道が他の日本アルプスの山々に比べ歩きやすく整備されており、複数の山小屋がも設置されていて多くの登山者に愛されているのもまた事実です。
これまでは低山や日帰り登山、比較的傾斜の少ない場所で何度か登山経験を積んできた人が、初めて日本アルプスに挑戦するにはちょうど良い山と言えるかもしれませんね。
燕岳山登山コースの難易度は?休憩場所はどんなところ?
燕岳がどのような山かわかったところで、ここからは燕岳の代表的な登山コースを初級・中級・上級のレベル別に3つ紹介します。
初級:燕岳登山と有明壮温泉コース
- 順路
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- 有明壮
- 燕岳登山口
- 第1ベンチ
- 第2ベンチ
- 第3ベンチ
- 富士見ベンチ
- 合戦小屋
- 燕山荘(えんざんそう)
- 燕岳
- 所要時間
- 片道およそ3時間40分、往復で7~8時間
中級:北アルプスのパノラマコース
- 順路
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- 有明壮
- 燕岳登山口
- 合戦小屋
- 燕山荘
- 大天荘
- 常念小屋
- 蝶ヶ岳
- 所要時間
- 片道でおよそ15時間、往復では30~35時間
上級:表銀座コース
- 順路
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- 有明壮
- 燕岳登山口
- 合戦小屋
- 燕山荘
- 大天荘
- ヒュッテ大槍
- 槍ヶ岳
- 所要時間
- 片道で13時間30分、往復では30~32時間
上記のうち、初級者向けのみが燕岳の山頂をめざすものです。ゆっくり進み、ほぼ30分に1回のペースで、ベンチごとに休憩を取る行程になっています。
対して中級・上級者向けの2コースは、燕岳だけでなく常念岳、大天井岳(おおてんじょうだけ)、蝶ヶ岳、槍ヶ岳など尾根伝いに周辺の山々を踏破する行程です。
往復で24時間以上かかるため、中級・上級向けコースでは宿泊登山は必須。初めての日本アルプス挑戦で余裕を持った行程にするなら、まずは初級者向けコースを選ぶことをおすすめします。
ちなみに、すべてのコースで通過する合戦小屋とは山小屋・休憩所のことです。標高2350m地点にあり、燕山荘以上の標高地点へ向かう前に体を休め、高所に体を慣らせるためにほとんどすべての登山者が利用するポイントになります。宿泊することはできませんが、ハイシーズンである夏季はスイカやうどんなど、一部飲食物の販売も行っています。事前に状況を確認のうえ、有効活用しましょう。
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燕岳山は日帰り登山できるの?
先述の初級向けコースであれば、燕岳登山を日帰りで行うことは可能です。ただ、登山口から山頂までの標高差1,300mを1日で上り下りするのは、足腰に大変な負担をかけます。
特に自重がかかりやすい下りでは足腰に痛みが出やすく、捻挫や骨折など大きなケガをしたり、下山に予想以上の時間が要し暗くなるまでに登山口に戻れない登山者も見られます。燕岳の日帰り登山に挑戦するなら、かなりの体力・筋力が必要であることをよく理解し、以下の対策を取ったうえで山に入ってください。
燕岳日帰り登山の心得
- 疲労が出てくる下りでも、登山口に到着するまで気を抜かないこと
- 万が一の事態に備え、懐中電灯と雨具、行動食を余分に持参すること
- 体への負担を軽減するため、下りでは歩幅を小さくしゆっくり歩く
- 下りで走ったり、歩くスピードを早めたりしない
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宿泊なら燕岳名物「燕山荘」がおすすめ|テント泊も可能
宿泊登山で燕岳に挑む場合、おすすめの宿泊施設としてまず燕山荘が挙げられます。
燕山荘の概要
- 1921年より営業を続ける、日本アルプスでも有数の歴史ある山小屋
- 予約制で、原則として小屋のなかに寝泊まりすることになる
- 「明るく楽しい小屋づくり」をモットーとしていて、宿泊と食事ができる
- その他登山教室やコンサート、ケーキフェアなどのイベントも随時開催している
燕山荘は、長く登山客に愛されてきた歴史ある山小屋です。抜群の眺望を誇り、美しい日の出・日の入りも見られますので、ぜひ予約のうえ利用してください。
燕山荘のテント場について
小屋ではなく、テントに泊まる「テント泊」で宿泊登山をしたい場合は、燕山荘または合戦小屋のテント場を利用することになります。
燕山荘のテント場は予約制のため、事前に予約のうえテントと食料を持参してください。
およそ30張分のスペースがありますので、早めに予約すれば問題なくスペースを確保できるでしょう。
対して合戦小屋のテント場は先着順です。予約することはできないうえ、計5張分のスペースしかないため、早めに到着して場所を確保する必要があります。
いずれも追加の飲料水は、小屋が販売対応している時間帯であれば買うことができます。
なおテント場では、早朝出発のため早めに就寝する人も多いです。
テントや食料など必要なものは持参する、ゴミをすべて持ち帰るなどの基本的なルールを守るとともに、周囲への配慮も忘れないようにしましょう。
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燕岳登山の服装や装備は?夏と冬でどんな違いがあるの?
夏と冬、それぞれの季節の燕岳登山にふさわしい服装・装備を以下に紹介します。季節を変えて燕岳登山に挑戦するときは、しっかり確認しましょう。
夏の燕岳登山にふさわしい服装・装備
- 化繊やウールなど吸汗性、速乾性に優れたアンダーウェアを着用
- 薄手の長袖、または吸汗性と速乾性に優れた半袖のシャツを、アンダーウェアの上に
- パンツは薄手で、伸縮性が高く足を動かしやすいものを選ぶ
- 靴底がしっかりしていて、足首をある程度固定するハイカットの登山靴が良い
- 日帰りなら20~30L、山小屋泊なら30~50L、テント泊なら50~70L容量のバックパック
- 下半身への負担軽減と転倒防止のため、軽いアルミ製のトレッキングポールも持参
- その他レインウェア、薄手のフリースやダウン、ヘルメット、サングラス、帽子、登山地図、コンパスなどの小物も持っていこう
冬の燕岳登山にふさわしい服装・装備
- 保温性に優れた化繊製のアンダーウェアを着用
- セーターやフリース、ダウンなどを体温調節しやすいよう重ね着する
- その上からフード付きのオーバーヤッケ、防寒着を着る
- 下半身は冬山用のタイツやスパッツ、ダウン素材のズボン下などを履いたうえでオーバーズボンを着用
- 外に出るときは目出し帽、ネックウォーマー、サングラスを必ず着用する
- 手袋は薄手、厚手、オーバーミトンの3種類を必ず携行すること
- 厚手と薄手の靴下を重ね履きしたうえで、10~12本爪のアイゼンを付けた冬用登山靴を履く
- 滑落した際に氷に突き刺せるピッケル、急斜面に強いワカンも持参すべし
- その他カイロ、電池、行動食、日焼け止め、リップクリーム、水筒、ヘッドランプ、レスキューシートやツェルトも持参すべし
雪の中を歩く夏の燕岳登山では、夏に比べ1.5倍の時間がかかります。また遮るもののない合戦小屋より高所では、非常に強い風が吹き付け歩きにくいです。体感温度も10度近く下がりますから、危険を感じたら引き返す必要もあると理解したうえで、冬の燕岳登山に臨んでください。
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おわりに:日本アルプスの一角、燕岳の登山難易度は高い…しっかり準備し、まずは日帰り登山から挑戦しよう
燕岳は標高2,763m、3,000m級の山々が連なる日本アルプスの一角です。初級コースでも1日7~8時間をかけ、およそ1,300mもの標高差を上り下りしなければならないため、その登山難易度は高め。登山経験がほとんどない初心者には、踏破は難しいでしょう。しかし登山道、山小屋の設備は整っているので、何度か高山や1日がかりの登山を経験した人なら踏破をめざせます。季節に応じた服装・装備をしっかり揃え、万全の状態で挑んでください。
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