比較的安価で販売され、私たちの食卓にあがる機会も多いブリ。しかし天然もののブリの場合、アニサキスという寄生虫による食中毒発症リスクがあることをご存知でしょうか。
今回はブリという魚、そしてアニサキスによる食中毒のリスクについて解説します。
そのうえで、食中毒発症リスクが激減するという養殖ブリの魅力や特徴、通販で買えるおすすめの養殖ブリまで見ていきましょう。
出世魚ブリの呼び方を知ろう!関東と関西で違いがある?
成長段階、体の大きさによって呼び名が変わるブリは、食べると立身出世ができる縁起の良い出世魚として知られていま。なお、ブリの成長段階ごとの呼び名は、地方によって若干異なります。
以下に、関東・関西でのブリの呼び名をそれぞれまとめていますので、確認してください。
ブリの呼び方の変化
- 関東の場合
- モジャコ⇒ワカシ⇒イナダ⇒ワラサ⇒ブリ
- 関西の場合
- モジャコ(ワカナゴ)⇒ツバス⇒ハマチ⇒メジロ⇒ブリ
全国的に知られている「イナダ」はもともとは関東のみで使われている呼び名で、「ハマチ」はもともと関西のみで使われていた呼び方でした。現在は、ブリよりも小型(ワカシ、イナダクラス)の養殖物を関東ではハマチと呼ぶことが多いようです。
ブリに含まれる栄養素
食材としてのブリに含まれる代表的な栄養素は以下の通りです。
- DHA(ドコサヘキサエン酸)
- DHAは、不飽和脂肪酸の一種で青魚に多く含まれる脂肪分。血中のコレステロール値や中性脂肪値の減少、脳の機能向上、記憶能力・学習能力の向上、抗うつ作用が期待できる
- EPA(エイコサペンタエン酸)
- EPAは、不飽和脂肪酸の一種で、青魚に多く含まれる脂肪分。抗炎症や免疫機能調節、脂質代謝の向上、血流促進による心疾患予防などの効果が期待できる
- ビタミンB1
- ビタミンB1は、炭水化物の代謝や、神経機能の維持に役立つ
- ビタミンB12
- ビタミンB12は、赤血球の構成成分であるヘモグロビンの生成、神経機能維持に役立つ
- ビタミンD
- ビタミンDは、カルシウムやリンの体への吸収に必要なタンパク質の合成を促す。またカルシウムに対しては、骨への沈着サポートも担う
- ビタミンE
- ビタミンEは、末梢神経の拡張、血流促進、抗酸化作用を期待できる
- タウリン
- タウリンは、疲労回復や血圧、コレステロールの量を適切に保つ
栄養満点のブリだけど寄生虫に当たることも!アニサキスの症状とは?
縁起が良いだけでなく、栄養価的にも食材として魅力的なブリですが、冒頭でも述べた通り食中毒になるリスクが指摘される魚でもあります。
ブリを食べることで食中毒を発症する、代表的な原因として挙げられるのがアニサキスという寄生虫です。
幼虫の時期に魚類の内蔵表面に寄生するが、時間とともに筋肉や身の方へ移動していく。季節を問わず、年間を通して出現します。白く細長い、体長およそ2~3㎝ほどのアニサキスの幼虫は、目視でも確認できるためそのほとんどです。そのため、大抵は下処理の段階で魚から取り除かれます。
しかし、内臓からブリやサバの厚い筋肉へ移動していた場合には目視で発見・除去することが難しく、寄生した状態のまま販売されることがあるのです。近年では目視以外にも、光に透かしたりブラックライトで検知する方法もとられていますが、それでも寄生するアニサキスを100%除去するのは不可能だといわれています。
なお、アニサキスは人間の体内で成虫になることはできません。誤って食べてしまっても、そのほとんどはブリの身と一緒に消化・排出されますが、生に近い状態で食べた場合にはヒトの胃壁や腸壁に侵入し、炎症を起こすことがあります。こうして起こるのが、俗に言う「アニサキス症」であり、激しい腹痛や吐き気、嘔吐、じんましんなどの食中毒症状を引き起こします。
対して、アニサキスと同じくブリに寄生し、アニサキスに似た見た目ながら人体に害を及ぼさない「ブリ糸状虫」という寄生虫もいます。
- ブリ糸状虫とは
- 魚の血を吸う、橙赤色の寄生虫。そのほとんどが春先に出現し、秋から冬には見られない
- 体長50㎝を超す大型の寄生虫であるため、目視で発見しやすい
- 食べてしまっても人体に害はないが、気持ちの良いものではないため除去される
ブリ糸状虫の場合、食べても食中毒を発症する恐れはありませんが、素人には見た目でアニサキスと区別することは難しいでしょう。万が一、ブリの身の表面や内側に糸状の寄生虫を見つけたら、アニサキスである可能性を考えて除去し、しっかり加熱してから食べるようにしてください。
なお、アニサキス感染症予防に万全を期すなら、糸状の寄生虫が付いていたブリの切り身は食べずに処分するのが最善と考えられます。
養殖のブリにアニサキスの危険がほぼない理由
海で育つブリを食べるうえでは、アニサキス症発症のリスクが付きまといます。対して、養殖されたブリにアニサキス症発症のリスクがほとんどないのは、エサが違うということが関係しています。
天然もののブリは、小魚やオキアミを食べています。小魚やオキアミはアニサキスに寄生されやすく、それらを食べることで自らの体内にアニサキスを取り込んでしまうのです。
対して、管理された飼料(エサ)を食べて育つ養殖のブリは、天然物の比べるとアニサキスを取り込む可能性が低くなります。ただし、養殖ブリであってもアニサキスに寄生されるリスクはゼロではありません。自然のオキアミをエサとして与えている養殖場や、自然の海水が混入する環境で養殖されたブリには、天然ものに比べ低い確率ながらアニサキスに寄生される可能性があります。
アニサキスのリスクを限りなく少なくしたいのであれば、「完全養殖」のブリにこだわることをおすすめします。
関連記事:養殖魚にもアニサキスはいる?いない?症状や気をつけたい魚の種類って?
ブリは天然・養殖ともに九州で多く採れる魚!
農林水産省の統計年報によると、平成30年のブリの天然ものの漁獲高は45%、のこりの55%は養殖での生産となっています。また、養殖されている魚種のなかでもブリの占める割合は42%と最も多く、養殖ブリが私たちにとって非常に身近な食材であることがわかります。
- 養殖魚の生産割合
- ブリ…42%
- マダイ…25%
- カンパチ…12%
- クロマグロ…8%
- フグ類…2%
ちなみに、農林水産省による平成30年海面漁業生産統計調査によると、ブリ類の天然ものの漁獲高、全国の養殖による収穫量は以下の通りです。
- ブリ類の漁獲高と生産量(平成30年度)
- 天然ものの漁獲高…日本全国で99,600t
- 養殖ものの生産量…日本全国で138,900t
また、天然ものと養殖もの、それぞれの漁獲高・生産量上位トップ3は以下の地域です。
ブリ類の漁獲・生産地ランキング(平成30年度)
- 天然物の漁獲高
- 第1位:長崎県…14,200t
- 第2位:島根県…9,600t
- 第3位:千葉県…8,900t
- 養殖ものの生産量
- 第1位:鹿児島県…46,500t
- 第2位:大分県…20,200t
- 第3位:愛媛県…18,900t
上記からは九州が天然もの・養殖ものを問わず、たくさんのブリ全国へ向け出荷する名産地であることが読み取れますね。
通販で買える!鹿児島や大分など九州のおすすめ絶品養殖ブリ
最後にブリの名産地、九州各県から通販で購入可能な絶品養殖ブリを5種類、それぞれの特徴と一緒に紹介していきます。
あなたの好みに合うサイズ、価格、加工方法のものを選んでください。
鹿児島県長島町の「鰤王」
単一漁協では日本一の生産量を誇るブランドブリです。潮の流れが早い長島町周辺で育てた脂乗りが良く、引き締まった身のブリを漁協主導で生産、加工、販売しています。
加工場は、養殖ブリの加工において日本初のHACCP認証を取得していることから、衛生的かつ安全な環境で迅速に加工処理が施された、新鮮な切り身を購入できるのも大きな魅力です。
およそ1.5㎏の半身「フィレ」、内臓を取り除いた「セミドレス」、生け簀から上げたそのままの状態「ラウンド」から選んで購入でき、フィレのみ「長島町のふるさと納税」の返礼品になっているため、返礼品として受け取ることができます。
長嶋海峡の「ボンタンぶり」
日本三大急潮として知られる長嶋海峡で、鹿児島県阿久根市特産のかんきつ類「ボンタン」の薄皮、果実のシャーベットを与えられて育った養殖ブリです。
早い潮にもまれた引き締まった臭みのない身と、ぷりぷりっとした食感が特徴で、1尾まるごとや下処理済みの「セミドレス」、半身にした「フィーレ」は1枚から購入できます。また、ボンタンぶり以外に昇格ぶりの1尾まるごと、ボンタンかんぱちのフィーレの購入も可能です。
大分県の「かぼすブリ」
大分県の名産品であるカボスを加えたエサで育てた養殖ブリです。切り身の色変わりが遅く、さっぱりとした臭みのない脂を味わえるのが特徴で、中骨と内臓は取り除き、腹骨とカマ、皮をのこして下処理をした「フィーレ」の他、濃縮あごだしや出汁ポン酢、もみじおろしがセットになった3~4人用「ぶりしゃぶセット」も購入できます。
刺身やカルパッチョ、照り焼きなどさまざまな食べ方で楽しみたいときはフィーレが、あごだしとのまろやかなハーモニーを楽しみたいなら、ぶりしゃぶセットがおすすめです。
長崎県の「養殖ブリ・ヒラマサ」
長崎県は橋口水産が養殖、加工して販売するブリやヒラマサの切り身で、焼き魚にする前提で調味された100gほどのものが多く流通しています。購入できる加工品の種類は、以下の通りです。
- 極上ぶりの西京漬け
- 西京味噌に、脂の乗ったブリをじっくり漬け込んだもの。味噌と脂の相性が抜群
- 極上ぶりの照り焼き
- 甘辛い調味液に、極上ぶりを漬け込んだもの。口のなかでとろけるような食感が特徴
- 極上ぶりのみりん干し
- 甘味とブリ本来の脂のうま味が際立つ逸品。やさしい味わい
おわりに:おいしく、アニサキス寄生のリスクも低い養殖ブリを取り寄せて食べてみよう
養殖される魚類のうち半分近い割合を占め、全国で年間130,000tも生産されているブリは、私たち日本人にとって非常に身近な魚です。栄養価が高く、比較的安価なブリですが、天然ものを生で食べるとアニサキスという寄生虫による食中毒のリスクがあるとされています。しかし飼料を与えられた養殖のブリなら、アニサキスによる食中毒発症のリスクは非常に低くなります。おいしく、安全な養殖ブリを各産地から取り寄せ、食べてみてくださいね。
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