養殖水産業のメリットと気になる問題点は?栽培漁業との違いや人気のブランド商品を紹介

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魚介類や藻類など、海で獲れる天然の資源には限りがあります。このまま際限なく、需要のままに獲り続ければ、いつか海から魚がいなくなってしまうかもしれません。
その問題をきっかけに、近年、永続可能な漁業の方法として一層注目されているのが養殖水産業です。今回は養殖水産業とは何か、そのメリット・デメリットや栽培漁業との違い、ブランド魚として知られる養殖水産商品について紹介していきます。

養殖漁業のメリットとデメリットとは?

魚を人間の手で育て出荷する養殖漁業のメリットとデメリットとして、以下が挙げられます。

養殖漁業のメリット
  • 天然資源を消費せずとも、食料を得ることができる
  • エサや水質を人の手で管理し育てるため、大きさや品質の安定化が可能
  • 成長が良く、病気に強い個体を交配させ、より高品質な系統のみ育てられる
  • 食べたものや育った環境の記録がのこるため、消費者にとって安心が大きい
  • 生産量を概算できるようになるため、漁業者にとって経営の見通しが立てやすい
  • 効率的に、必要な分だけ高品質な水産物を生産・販売することが可能になる
養殖漁業のデメリット
  • 糞や食べ残しにより、養殖場周辺の海面全般に悪影響を及ぼす恐れがある
  • 天然ものに比べ狭い敷地内で育つため、病気乾癬へのリスクが高くなる
  • 周囲の付着生成物にエサを奪われるなどして、うまく育たないケースもある

養殖魚にはアニサキスなど寄生虫リスクが低くなるメリットも

魚のなかには、クジラやイルカなど海洋哺乳類のなかで成虫になる寄生虫の幼体「アニサキス」に寄生されているものがあります。アニサキスは、エサとなるオキアミや小魚を介してスルメイカやサバ、シャケ、アジ、サンマ、ブリなどの内臓に侵入した後、時間をかけ筋肉へ寄生していく寄生虫です。

アニサキスの寄生に気付かず、寄生された魚を人間が生で食べてしまった場合には、アニサキス症と呼ばれる食中毒を発症する恐れがあります。

アニサキス症の症状例
激しい腹痛、吐き気、嘔吐、発汗 など

厚生労働省の発表によると、2016年には126件、2017年には240件、2018年には468件のアニサキス症の発生が報告されています。ただし、養殖魚に与えられることの多い生餌(なまえ)と呼ばれる冷凍魚や乾燥魚粉には、生きたアニサキスが混入している恐れはほとんどありません。

このため、人間の手で作られた飼料を食べて育つ養殖魚には、アニサキスによる食中毒を起こすリスクが限りなく低いと考えられているのです。上記から、養殖水産業が私たち消費者と漁業関係者双方にとって、また地球環境を考えるうえでもメリットの多い漁業方法だといえるでしょう。

養殖漁業と栽培漁業との違いは?

ここからは、養殖漁業と混同されやすい栽培漁業との違いを理解していきましょう。人の手を入れて魚介類を育て、出荷するという意味では共通する養殖漁業と栽培漁業ですが、人の手の入れ方や期間には違いがあるのです。

養殖漁業とは
  • 卵から稚魚、そして出荷可能な大きさになるまで、人間が餌や水質を管理するいけすや水槽、網の中で魚を育てること
  • 漁をして魚を獲るというよりは、畜産に近いイメージ
  • 個人や企業、漁業協同組合などが養殖業者として飼育・生産し、出荷のために水揚げして加工や販売まで行うことが多い
栽培漁業とは
  • 卵から稚魚になるまでの最も弱く、外敵に狙われやすい時期のみ人の手で育て、ある程度大きくなったタイミングで生育しやすい自然環境下に放流し、成長後に漁獲すること
  • 人の手で育てるのは卵から稚魚として安定するまでで、そこから出荷に適したサイズになるまでの期間は自然界で育てるという点において、養殖漁業とは大きく異なる
  • 卵から稚魚にまで育てる栽培段階は国や自治体、漁業協同組合などが行い、出荷のための漁獲は地域の漁師によって行われることが多い
  • なお原則、天然ものとして出荷される

以上を要約すると、赤ちゃんの頃から成体になるまで魚を育てるのが養殖漁業、子どもの頃のみ人の手で育てた後、自然環境下に放流し生育させ漁獲するのが栽培漁業、ということになりますね。

養殖漁業の種類はどれくらいある?

日本全国で盛んに養殖水産業が行われている地域と、各地域で生産されている代表的な水産物は、以下の通りです。

養殖漁業が盛んな地域と水産物

北海道・東北

  • 北海道…ホタテ、昆布
  • 青森県…ホタテ
  • 岩手県…ワカメ、昆布
  • 宮城県…ギンザケ、カキ、ノリ、ワカメ、ホヤ

関東・東海・北陸

  • 福井県…トラフグ、マダイ、スズキ
  • 千葉県…ノリ
  • 静岡県…マアジ、マダイ、ハマチ
  • 愛知県…ノリ
  • 三重県…マアジ、マダイ、シマアジ、真珠

近畿

  • 京都県…ハマチ、マダイ、カンパチ
  • 兵庫県…トラフグ、ハマチ、マダイ、ノリ

中国・四国

  • 広島県…カキ
  • 岡山県…カキ、ノリ
  • 鳥取県…トラフグ
  • 愛媛県…マダイ、ハマチ、トラフグ、カンパチ、真珠
  • 徳島県…ハマチ、マダイ、カンパチ、ワカメ
  • 香川県…ハマチ、カンパチ、マダイ、トラフグ、ノリ
  • 高知県…マダイ、カンパチ、ハマチ、シマアジ

九州・沖縄

  • 長崎県…トラフグ、ブリ、マダイ、クロマグロ
  • 大分県…シマアジ、ヒラメ、ブリ、ヒラマサ
  • 熊本県…マダイ、ブリ、シマアジ、トラフグ、クルマエビ、ノリ
  • 鹿児島県…ブリ、クルマエビ、カンパチ、クロマグロ
  • 沖縄県…クルマエビ、ヤイトハタ、モズク

【参考】
「養殖業 – 漁業の紹介 | 漁師.jp:全国漁業就業者確保育成センター」
「どこで生産されているの? | 全国海水養魚協会」

養殖漁業されやすい種類の条件

養殖漁業の対象となりやすいのは、以下2つの条件を満たす種類の魚介です。

  • 流通価格が高く、生産と出荷によりある程度の利益を見込めるもの
  • 天然ものの漁獲量が減少していて、市場からのニーズが高いもの

先に見たようにブリやカンパチ、ヒラメ、マダイなどの魚介類が特に全国各地で養殖されているのは、流通価格が高いためです。時間とお金をかけて飼育しても、出荷後に利益を獲得できる可能性が高いからこそ、これら種類の養殖が盛んに行われています。

一方でイワシなど、天然ものの漁獲量が多く国内に安定供給されていて、流通価格が安価な魚介類が養殖されることはほとんどありません。

近年では、土用の丑の日前後で需要・流通価格ともに非常に高くなるウナギ養殖に注目が集まり、事業として行う漁業者が増えています。養殖される魚介類の種類は、消費者からニーズや流通価格帯、その土地の地理・気候条件などさまざまな要因から決定されると理解しておきましょう。

食卓に届く魚介類は天然より養殖の方が多い?

農林水産省の発表によると、平成30年現在、4種類の魚の漁獲・生産量のうち天然ものと養殖ものが占める割合は、以下の通りです。

平成30年度分、主な魚種の生産割合

天然もの養殖もの
マダイ20%80%
ブリ類45%55%
クロマグロ34%66%
クルマエビ18%82%

これら4種類は、いずれも養殖ものの割合が天然ものの漁獲高を上回っていて、全体流通量の50%以上が養殖されたものとなっています。上記から、私たちの食卓にのぼることの多い身近な魚も、養殖漁業に支えられていることがわかりますね。

また平成26年2月、世界銀行がFAO及び国際食糧政策研究所と共同で調査・発表した報告書では、市場において養殖ものの魚介類が占める割合はますます高くなると結論づけられています。同調査では2030年の漁獲・生産される魚介類のうち、およそ60%は養殖漁業による生産品になると予測されているのです。

ブランド魚も!話題の養殖水産商品を一部紹介

エサや水質を人間の手で管理するため、安定した量と質で生産・出荷できる点が、養殖漁業最大の強みです。「おいしくない」「天然ものより安くて低品質」という養殖水産品へのイメージは、もはや過去のものです。技術の進歩により、近年の養殖水産品の質は飛躍的に向上しています。

このため、味の向上や流通価格の高いブランド魚にするため、あえて養殖漁業を行い魚介類を生産・出荷する事業者も増えているのです。

以下からは、日本各地からブランド化に成功した注目の養殖水産品を5種類、それぞれの特徴と一緒に紹介していきます。通販で購入できる商品もありますので、気になるものがあれば取り寄せてみましょう。

唐津Qサバ

  • 佐賀県唐津市と九州大学が共同研究を行い、開発に成功した完全養殖のマサバ
  • 寄生虫・アニサキスによる食中毒のリスクが非常に低いサバで、脂乗りが良く、独特の臭みが少ないため刺身でも食べられる
  • 唐津市内の旅館や飲食店のメニューとして提供されている他、大漁鮮華や唐津うまかもん市場など、市内市場でも購入可能

▼ 唐津Qサバ

関連記事:唐津Qサバと唐津市の魅力|おすすめの楽しみ方と入手方法を調べてみた!

オリーブハマチ

  • ハマチ養殖発祥の地とされる香川県で作りだされた、ブランドハマチ
  • 平成20年、世界で初めてハマチ養殖の事業化に成功したとされる野網和三郎の生誕100年とハマチ養殖80周年を記念し研究が開始された
  • 抗酸化作用が高く、同じく香川県の特産品であるオリーブの葉を混ぜた飼料で育てるため変色や酸化がしにくく、ストレス軽減、疲労改善効果などを見込めるのが特徴

▼ オリーブハマチ

べっ嬪(べっぴん)さくらますうらら

  • 富山県射水市のブランド魚
  • 県の名産品である「ます寿司」に使用するサクラマスの天然漁獲量の減少を受けて、平成29年より射水市とJR西日本とで共同開発した
  • 富山湾の水深100mから汲み上げた海水で養殖しているため、寄生虫のリスクが少なく安心して生食できるのが特徴
  • 身は鮮やかなオレンジ色で臭みが少なく、やわらかい肉質で、あっさりとした味わい

▼ べっ嬪さくらますうらら

霧島サーモン

  • 鹿児島県のブランド魚
  • サーモンをさらにおいしく、安心して生食できるよう作られたニジマスで、投薬を一切行わず霧島連山から湧き出る自然水で生育しているのが特徴
  • 小さな子どもからお年寄りまで、安心して食べることができる

▼ 霧島サーモン

久米島ブランドの車海老

  • 沖縄本島の西、およそ100㎞の場所にある離島・久米島のブランド魚
  • 島の海洋深層水を使い、66,000㎡の広大ないけすで育てたクルマエビで、ネット通販で購入できる他、ふるさと納税の返礼品としても受け取れる

▼ 久米島ブランドの車海老

おわりに:養殖水産は消費者にも、事業者にもメリットが大きい漁業方法!養殖ブランド魚が日本各地で販売中

卵や稚魚の段階から成体になるまで人が管理して育て、出荷することを養殖漁業と言います。かつては天然ものに及ばず、おいしくないと言われてきた養殖水産品ですが、技術の進歩により安定した質・量を生産できるようになってきました。近年では全国各地で養殖水産品をブランド化する動きも起こり、養殖水産品はおいしい魚介類の代名詞となりつつあります。私たちの食卓を彩ってくれる各地の養殖水産品を、おいしくいただきましょう。

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