頭痛の種類によっては、温泉入浴により症状が軽減されることがあります。そこで今回は緊張型頭痛、片頭痛と頭痛の種類別に温泉入浴によって期待できる効果や、温泉入浴後に頭痛が起こった場合に考えられる原因、適切な対処法を紹介していきます。
慢性的な頭痛解消に温泉?温泉に期待できる健康効果とは
まずは温泉がどんなものか、また温泉に期待できる健康効果について学んでいきましょう。1948制定の温泉法によると、温泉とは以下の温度または物質を有し地中から湧出する温水、鉱水及び蒸気、炭化水素を主成分とする天然ガスを除くその他ガスのことです。
温泉の定義上必要な温度、または物質
温度
温泉源から採取されるときの温度が摂氏25度以上
物質
以下に掲げるもののうち、いずれか一つ
- 溶存物質(ガス性のものを除く)…総量1,000mg以上
- 遊離炭酸(遊離二酸化炭素)…250mg以上
- リチウムイオン…1mg以上
- ストロンチウムイオン…10mg以上
- バリウムイオン…5mg以上
- フェロまたはフェリイオン(総鉄イオン)…10mg以上
- 第一マンガンイオン…10mg以上
- 水素イオン…1mg以上
- 臭素イオン(臭化物イオン)…5mg以上
- ヨウ素イオン(ヨウ化物イオン)…1mg以上
- フッ素イオン(フッ化物イオン)…2mg以上
- ヒドロヒ酸イオン(ヒ酸水素イオン)…1.3mg以上
- メタ亜ヒ酸…1mg以上
- 総硫黄…1mg以上
- メタホウ酸…5mg以上
- メタケイ酸…50mg以上
- 重炭酸そうだ(炭酸水素ナトリウム)…340mg以上
- ラドン…20(1/100億キュリー単位)以上
- ラジウム塩…1/1億mg以上mg
温泉に期待できる健康効果の具体例
温泉に期待できる健康効果としては、以下が挙げられます。
- 体を温めることによる代謝の促進、自律神経の調整作用
- 浮力や水圧、お湯の摩擦、抵抗などによるマッサージ効果やリラックス作用
- 温泉地に来たという事実による、心身へのリフレッシュ効果
緊張やストレスからくる頭痛のように、頭痛の種類・原因によっては、温泉により症状改善できる可能性があるでしょう。
ただし、すべての頭痛に対し温泉が良い効果をもたらすわけではありません。これを踏まえ、次章からは温泉の温熱や水圧により症状改善が期待できる頭痛と、そうでない頭痛の種類について解説していきます。
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緊張型頭痛と片頭痛、温めるとよいのはどっち?
頭痛には大きく、原因と症状の異なる緊張型頭痛と片頭痛の2種類があります。
種類別、頭痛の原因と特徴
緊張型頭痛の原因と症状の特徴
特に無理な姿勢、同じ様な姿勢の維持によって目や体が凝り固まり、倦怠感とともに現れる頭痛。痛みをメインに、以下のような症状が現れます。
- 後頭部と首筋を中心に、頭全体が締め付けられるように痛む
- 痛みが出ている間、またその前後には必ず肩や首のこりを感じる
- パソコンを使った後や、長時間の読書、デスクワークなどの後に起こりやすい
- 軽いめまいを伴うこともあり、体を温めると痛みが緩和されることが多い
片頭痛の原因と症状の特徴
1週間に1回、月に1回など周期的に起こり、こめかみから目の周辺を中心に頭のあらゆる部分に現れる頭痛。痛み以外も含め、以下のような症状が現れます。
- 脈拍にあわせ、ズキンズキンと波打つように強い痛みが起こる
- 人によって痛みの出方が異なり、生活に支障をきたすほど頭全体が痛むこともある
- 頭痛を自覚する前に、前兆としたチカチカとした光が見えることがある
- 吐き気や嘔吐、下痢、光や音、におい、気温や湿度への敏感性が増すなど、痛み以外の症状が一緒に現れることも多い
- 頭を動かしたり、体制を変えると痛みが増す
- 人によっては数日間、痛みが持続することがある
緊張型頭痛は、体のこりやこわばりが主な原因で起こる頭痛で、体を温めると軽減するケースが多いとされています。対して片頭痛は脈痛ように痛み、ちょっとした刺激によって悪化したり、吐き気など頭痛以外の症状も併発しやすい傾向が見られますね。
適切な対処法
上記を踏まえ、緊張型頭痛と片頭痛の適切な対処法を以下にまとめました。
緊張型頭痛の対処法
- マッサージやストレッチ、蒸しタオル、お風呂などで体を温め、血行を促進して首と肩周辺のこりをほぐす
- 痛みが落ち着いた頃を見計らってストレッチしたり、散歩をするなどして気分転換する
片頭痛の対処法
- 冷たいタオルなどを痛む場所に当てて冷やし、血管を収縮させる
- 暗く静かな、できるだけ刺激の少ない場所で横になり、安静に過ごす
- 痛みが現れ始めたタイミングで、血管収縮作用のあるカフェインをコーヒーや緑茶、紅茶などを飲み摂取する(悪化する場合もあるので注意)
体を温めることで症状が軽減する緊張型頭痛に対しては、温泉が良い効果をもたらすと考えられる一方、患部を冷やすことが痛みの軽減につながり、血管拡張で痛みが増す片頭痛の場合は、温泉に入ると症状が悪化する可能性が高いです。痛みの現れ方などの特徴が片頭痛に当てはまる場合は、温泉に入らない方が無難でしょう。
温泉に入ったら頭痛が…湯あたり?好転反応?対処法を紹介
緊張型頭痛を和らげてくれる温泉ですが、逆に温泉入浴による「湯あたり」が原因で頭痛が現れるケースもあります。
- 湯あたりとは
- 温泉入浴後、2~7日後までに起こる不快な諸症状のこと
- 倦怠感や吐き気、嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢、寒気、頭痛などさまざまな症状が一時的に現れ、一定期間で消えるのが特徴
湯あたりが起こる原因は、温泉成分が体に合わないことによる拒否反応のようなもの、入浴の繰り返しによる臓器への過負荷などが挙げられます。このため適切に対処すれば、一定期間で湯あたりの症状は治まり、体調も回復するでしょう。
湯あたりへの適切な対処法
- 温泉から出て外気にあたり、ゆっくり体温を下げていく
- 涼しいところで横になり、体調が安定するまで安静に過ごす
- 水分を補給し、体内の温泉成分の循環と排出を促し、体温を下げる
また一方で、温泉入浴に伴って現れる体調変化として湯あたりではなく「好転反応」が現れるケースもあります。
- 好転反応とは
- 温泉入浴から1週間前後で、湯あたりに似た不快症状が現れるもの
症状の現れ方の特徴、湯あたりと見分け方については、以下を参考にしてください。
- 好転反応の代表的な症状
- 倦怠感、眠気、あくび
- 便秘、下痢、吐き気、腹痛
- 頭痛、頭が重い、ふらふらする
- 体の痛み、しびれ(感じる場所は日々変化する場合がある)
- 発汗、湿疹、吹き出物、目やに、尿の色の変化
- 発熱
- 好転反応で起こるはっきりしない症状や不快な変化
- 不快、不調症状と平行して、体調が良くなる時間も得られる(肌荒れはしているが便通は良くなった、食欲は増したが体に痛みがある など)
- 日常生活に支障のない、軽度の深い症状だけが続いている
湯あたりが温泉成分が合わない、温泉入浴による体への過負荷から起こっているのに対して、好転反応は温泉の作用を得て体質が変化することに伴って現れるとされています。
好転反応への適切な対処法
温泉入浴後、好転反応と思われる症状が現れた場合には以下の対処をして体の循環、体の回復を助けてあげましょう。
- 水またはぬるま湯を多めに飲み、体液の循環とデトックスを促す
- 野菜やフルーツを意識的に多く摂り、老廃物の排出を助ける
- ストレッチやウォーキングなど無理のない範囲で運動をし、健康的に過ごす
- 気持ちよく、リラックスして過ごせる温度のお風呂に使ってゆっくり過ごす
- 発熱や倦怠感がひどく、動くのが辛いときは水分をとって横になる
湯あたりも好転反応も、まずは水分を摂って休むという点では同じ対処が必要になります。温泉入浴を始めてから1週間前後、ちょっと遅いタイミングで症状が現れた場合は好転反応の可能性が高いので、水分補給と休息に適度な運動をプラスしましょう。
ただし、我慢できないほど辛い症状が現れる場合は、何か別の疾患が原因かもしれません。無理をせず、医師に相談して指示を仰ぎましょう。
温泉入浴の注意点とは?体に負担をかける温泉の入り方
ここでは体への負担を軽減しつつ、温泉からより高い健康効果を得るための入浴法について学んでいきましょう。
以下に、高い健康効果を得るために行うべき温泉入浴前後の注意点をまとめていますので、参考にしてくださいね。
健康効果を高める、温泉入浴のポイント
入浴前
- 胃腸への負担を避けるため、空腹時や食後30分以内の入浴は避ける
- 血圧以上や心筋梗塞、脳卒中のリスク高まるため、飲酒直後の入浴は避ける
- 空腹なら温泉まんじゅうなどを食べたうえで、脱水予防のためにコップ1杯の水を飲む
- いきなり熱いお湯に肩まで浸かると体がびっくりするので、まずは掛湯やシャワーをしてから浴槽へ行こう
入浴中
- 適切な入浴時間は、38~40度のぬるめのお湯で20分が目安
- のぼせやすい自覚のある人はこまめに休憩をはさむか、半身浴で楽しもう
- 足首や手首、肩などを軽く動かし、血行を促進すると尚良し
入浴後
- 温泉成分が流れてしまうため、あがり湯は基本的に必要ない
- ただし酸性の温泉の場合は、かるくあがり湯をするのがおすすめ
- 脱水予防のため、最低でもコップ1杯の水を飲む
- 脱衣所で座るなどして、ゆっくり休んで体調不良を防ぐ
慢性頭痛の改善は温泉のほかどんな治療が選択できる?
種類を問わず、慢性的な頭痛に悩まされている場合は、医療機関を受診しましょう。命にかかわる病気がないかを検査し、専門家の視点でしっかり診察・診断してもらって、原因にあった治療を受けることをおすすめします。
例えば緊張性頭痛、片頭痛の場合、医療機関では以下のような治療を受けられます。
緊張型頭痛の治療例
- 筋弛緩薬、漢方薬などで頭痛の原因である肩や首のこり、こわばりを和らげる
- 不安やストレスが原因と考えられる場合は、抗うつ薬などを用いて薬物治を投与する
- 根本原因である心身の緊張を産まないための考え方、生活指導を行う
- 血行促進に効果的な入浴、ストレッチ、軽い運動の習慣をつける
- 必要に応じて、心療内科での治療を併用する
片頭痛の治療例
- 原因と考えられる三叉神経周辺の炎症と脳血管の収縮を、トリプタンという薬物で抑える
- その他痛み止め、吐き気を止めるための点鼻薬など、薬で対症療法をしていく
- 片頭痛の頻度が高い場合は、予防薬を用いて発生頻度を抑える
- 痛みを軽減するための対処法、生活指導を行う
頭痛での受診に際し、メモしておくべき内容の例
頭痛は症状を他者に的確に伝えるのが難しいため、症状のあるときに以下のような「受診メモ」を用意してから、医療機関を受診するようにしましょう。
- 頭痛が始まった時期、痛み方、痛みの出る場所について
- 頭痛に伴う諸症状や前兆の有無、1回目以降の頭痛の頻度はどのくらいか
- 症状があるとき、体や頭と温める場合と冷やす場合、どちらが楽になるか
- 症状があるとき、頭や体を動かすと体調がどう変化するか
- 症状があるとき、光や音、匂いへの感覚に変化はあるか
- 家族や親族に、同じ様に頭痛に悩む人はいるか
- 受診する当日、どこにどんな頭痛や、随伴症状があるか
おわりに:頭痛のうち、緊張型なら温泉入浴で軽減できるかも!
肩や首のこり、筋肉のこわばりが原因の緊張型頭痛は、温泉による温浴効果で軽減できる可能性が高いでしょう。一方で周期的に発作の様に発症し、血管の拡張によって症状が悪化する片頭痛は、温泉に入ると悪化する可能性があります。また、湯あたりや好転反応として、温泉に入ったことがきっかけで頭痛が発生するケースもあるので、注意が必要です。慢性的な頭痛や体調不良がある場合は無理をせず、一度医療機関で相談しましょう。
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