ほとんどの温泉旅館では館内着、または温泉街での湯めぐりを楽しむためのアイテムとして、宿泊客に浴衣を貸し出しています。
そこで今回は、温泉旅行で旅館の浴衣を着こなすポイントを、お祭りなどで着る一般的な浴衣との違いも踏まえながら学んでいきましょう。
温泉旅館に置いてある浴衣の特徴って?
温泉旅館で提供される浴衣は、浴衣のなかでも「簡易浴衣」「温泉浴衣」と呼ばれるもの。浴衣を含む和服は、着る人の体形に合わせて方から足元までの「身丈」、胴回りの大きさである「身幅」、腕の長さ「袖丈」を調節して着るのが一般的です。
反物から着る人の体に合わせて仕立てるか、大きめに作った浴衣の布をたくし上げて紐で固定するなどして調節し、体形に合わせて着用します。対して、旅館に訪れるさまざまな年齢・性別・体形の人が脱ぎ着することを前提に作られる温泉浴衣には、以下の特徴が見られます。
温泉浴衣の特徴
あらかじめ、3~4パターンのサイズ展開がされている
温泉浴衣では身丈、つまり身長を基準に大人・子どもそれぞれに3~4パターンのサイズ展開がされています。胴回りの身幅、腕の長さによって変わる袖丈には、サイズによる違いは基本的にありません。
一般的な和服のサイズへの考え方、着方を知らなくても、自身の身長を基準に体に合うものを選べる仕様になっているのです。
色柄は、誰で違和感なく着られるものに統一されている
温泉旅館にはさまざまな年齢や性別の人が訪れるため、温泉浴衣のデザインは男女どちらでも着られる落ち着いた色柄に統一されていることが多いでしょう。
ただし、近年では女性客に色浴衣を提供する温泉旅館が増えているため、温泉浴衣のデザインバリエーションも多様化してきています。
着物との違いはある?おはしょりや衣紋抜きはしない?
サイズや色柄以外にも、温泉浴衣には以下の特徴があります。
一般的な和服にはない、温泉浴衣の特徴
- やわらかい生地が使われ、ゆとりある作りになっている
- 袖の下のふくらみ「たもと」が短く、動きやすい
- サイズ違いのない身幅は、大きめに作られている
- 身長に合ったサイズを選んで着るため、身丈を調節する必要がない
- 帯には細くやわらかな、伊達締めに似たものを使う
- 「丹前」と呼ばれる上着を羽織って着る前提で作られている
このため、一般的な和服を着るときに必要な「衣紋(えもん)抜き」や「おはしょり」、和服用の下着である「襦袢」も、温泉浴衣の着用時には必要ありません。
衣紋抜きは、和服を着るときに襟と首筋にこぶし1つ分ほどの空間を空けることを言いますが、やわらかい生地の温泉浴衣で行うとだらしなく、着崩れの原因にもなります。身丈や袖丈の調節のために必要なおはしょりも、裾が自身のくるぶしのあたりに来るサイズの温泉浴衣を選べばいいだけなので、必要ありません。
また、丹前を羽織るため、和服の下に着て着崩れや透けを防ぐ肌襦袢も、着なくてOKです。
【女性】温泉浴衣の基本の着方
温泉浴衣の基本、一般的な和服との違いがわかったら、ここからは男女別に温泉浴衣の基本的な着方を紹介していきます。女性向けの温泉浴衣の基本的な着方は、以下の通りです。
<h3女性向け、温泉浴衣の着方
- まずは袖を通し、浴衣を羽織る
- 浴衣の前にくるところ、襟の部分を左右に大きく広げ裾の長さを揃える
- シワにならないよう注意しながら右側の襟を腰に当てて、その上から左側を被せる
- 帯の中心をウエストの中心あたりに当てて一周させ、帯を結ぶ
- 結び目を右腰のあたりに持って行き、シワを伸ばし全体を整えたら完成
裾の長さを合わせるとき、長すぎるようならもう1サイズ小さい浴衣に替えましょう。それ以上小さいサイズがない場合は、3の段階で裾の長さを調節し、腰部分に巻いた紐に布を畳み込むおはしょりをして、長さを調節してくださいね。
ちなみに、帯の結び方に決まりはありません。ちょうちょ結びなど、自身が簡単にできる結び方を結べばOKです。帯の結び方を詳しく知りたいという人は、以下に温泉浴衣の帯のおすすめの結び方を紹介していますので、参考にしてくださいね。
温泉浴衣の帯、リボン結びの手順
- 一周させ、一度結んだ帯の結び目を前に持ってくる
- 帯の余った部分を、左右ともに下へ引っ張り結び目を引き締める
- 結び目の下側から出ている帯を左手で持ち、輪っかにする
- 輪っかの上からもう一方の帯を巻き付け、ちょうちょ結びにする
- 左右の輪っかがきちんと横を向くよう、結び目を調節する
なお温泉浴衣を着るときの髪型は、そのまま温泉に入れるよう簡単にまとめておくのがおすすめ。
ただし、ワックスなどを使ってしっかりヘアセットをする必要はありません。あくまでお風呂に入るための身支度ですから、髪がお風呂に浸からず、清潔に入浴できる程度にまとめれば十分です。ロングヘアの人は軽く束ねてお団子に、ショートヘアの人は耳にかけるなどして、普段と違う雰囲気にしてみましょう。
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【男性】温泉浴衣の基本の着方
続いて、男性向けに温泉浴衣の着方を説明していきます。
男性向け、温泉浴衣の着方
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- まず袖を通して浴衣を羽織り、首の後ろに襟をつける
- 左右の襟を広げて裾の長さを調節し、まず右襟を、そして左襟を腰に当てる
- 左右の襟の重なる部分がのどのくぼみの下になるよう、位置を調節する
- 下腹部に帯の中心を当てて、体に2~3周巻き付ける
- 帯を結び、結び目を右から背中の方へ回す
なお、男性が温泉浴衣を着るときにおすすめの帯の結び方は、シンプルでパリッとした印象になる「貝結び」です。以下に貝結びの手順を紹介していますので、こちらも参考にしてくださいね。
温泉浴衣の帯、貝結びの手順
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- 輪っかが下にくるよう帯の端を半分に折り「手先」をつくる
- 手先を右手に持ち、そこから30㎝ほどの箇所を左脇に当てる
- 手先はそのままに、のこりの帯は広げて2~3周体に帯を巻き付ける
- 帯を巻く際は手先の上に巻いていき、交差する度に帯を締めるようにする
- 余った帯を折り返して袋状ににし「垂先」をつくる
- 手先を下にして、垂先で手先をくるむように一回結ぶ
- 手先を左側に持ち上げ、垂先で手先をくるむようにして占める
- 形を整え、右回りで結び目を背中の右後方へ持って行く
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また男性が温泉浴衣を着る場合の髪型にも、女性と同様、清潔感が求められます。単発の場合はトップやサイドに毛束を作り、前髪は上げて、ボリューム感のあるアレンジにするのがおすすめです。
長髪の場合は温泉に浸からないようすっきりと束ね、襟元をすっきり見せるようにすると良いでしょう。
おわりに:清潔感と個性を意識し、温泉浴衣の着こなしを楽しんで!
簡易的とはいえ、温泉旅館に置いてある浴衣は旅情を盛り上げてくれる重要なアイテムです。旅館で過ごすときや温泉街散策時、きれいに浴衣を着こなすことができれば、旅行全体がより思い出深い時間となるでしょう。着付けが簡単である分、帯の結び方や髪型で個性を出すやすいのも温泉浴衣の良いところです。清潔感が出るよう注意しながら、旅行先で温泉浴衣の着こなしを楽しみましょう。
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