和食をはじめ、さまざまな分野の料理でブランド野菜として珍重されている京野菜。
今回は具体的に京野菜がどんな野菜なのか、その定義や含まれている栄養価、期待できる健康効果、種類別の特徴と一緒に解説していきます。
京野菜ってどんな野菜?
京野菜という言葉に、明確な定義はありません。
一般的には「京の伝統野菜」または「ブランド京野菜」として認められたものが、まとめて京野菜と認識されています。
- 京の伝統野菜の基準
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- 明治時代以前から京都府内全域で作られてきた野菜(たけのこを含む)
- 上記の条件を満たし現在も栽培、保存されている品種に加え、絶滅した品種
- ただし、シダやキノコ類は含まない
- 参考:「京の伝統野菜・京のブランド産品/京都府ホームページ」
- ブランド京野菜の基準
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- 優れた京都の農林水産物のなかでも、特に高品質と京都府に認められたもの
- 参考:「ブランド京野菜(京のブランド産品)/京都府ホームページ」
京都は1,000年以上前から政治・経済の中心として栄え、全国から品質の高い野菜と料理人が集まる都でした。
また豊富な地下水と鴨川のきれいな水、夏と冬の気温差が大きい盆地の気候、海産物が手に入りにくい土地柄と、野菜の品種改良が進む条件も揃っていたのです。
これらの条件から京都には特有の食文化が生まれ、これに追随するようにして、京野菜も発展してきたと考えられています。
現代、京野菜は日本の他地域や西洋野菜にはない独特の色合いとかたち、香り、味わいをもつ魅力的な食材として世界に認知されるようになりました。
悪く言えば「クセのある野菜」ということになりますが、そのクセこそが、京都の歴史が生んだ京野菜の個性として愛されているのです。
京野菜が健康維持に役立つといわれるのはなぜ?
京都府で伝統的に栽培されてきた京野菜は、原種に近い野菜だと考えられています。
現在、一般的に流通している野菜の多くは西洋野菜をベースに大量の栽培・収穫が可能になるよう、病気や害虫への耐性を上げ品種改良したものです。
しかし西洋野菜との交雑を避け、伝統的な方法で栽培され続けてきた京野菜は、大量生産するための品種改良が成されていません。このため、原種に近い京野菜には、他の野菜が失った栄養価や健康効果が期待できると考えられているのです。
事実、京都府立大学や京都府農林水産センターなどの研究では、京野菜には抗酸化作用や発がん予防、糖分・カロリー摂取を抑える作用が期待できると報告されています。
- 抗酸化作用とは
- 細胞を傷つけ、劣化・老化を招く活性酸素の働きを抑える作用のこと。抗酸化成分を積極的に摂ることで、免疫力アップや生活習慣病予防、アンチエイジング効果が期待できる。
- 発がん予防作用とは
- がんは細胞の突然変異、エラーによって起こる疾患。一部の京野菜には、細胞の遺伝情報が突然変異を起こすのを防ぐ高い「生物的抗変異原性」があることが確認された。
- 糖分・カロリー摂取の抑制作用とは
- 一部の京野菜には、甘い匂いを発するものの糖分・甘さを有しないものがある。この性質を利用することで、糖とカロリーの摂取量制限に役立つと期待されている。
京野菜にはどんな種類があるの?
ここからは、代表的な京野菜を10種類、それぞれの特徴と一緒に紹介していきます。
- 壬生菜
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- 細く、ヘラのような形の葉が特徴的な葉野菜
- 辛子のような香りがあり、漬物野菜として珍重されてきた
- 免疫力アップや美容効果のあるビタミンC、食物繊維が豊富
- 九条葱
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- 京野菜の中でも古い歴史を持つ
- 葉の内側のぬめりと甘さが特徴的な葱で、京野菜の代表的な品種
- ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC・βカロテンのビタミン類と、血行を促進する硫化アリルが豊富
- 伏見唐辛子
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- 「ひもう」とも呼ばれる、京都で古くから栽培されてきた品種
- しし唐に近い見た目と味で、カルシウム、リン、タンパク質などの栄養価をピーマンのおよそ2倍含む
- 万願寺唐辛子
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- 伏見唐辛子と、カリフォルニア生まれの大型唐辛子が交雑し、大正時代に生まれたとされる品種
- ビタミンC豊富で、食べ応えのある大きさと甘味のある味わい、柔らかな果肉を楽しめる
- 聖護院大根
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- カブのような、丸いフォルムが特徴的な大根
- 苦味がなく、煮崩れしにくいのが特徴で、煮込み料理にするととろけるような味わいになる
- 抗酸化作用の高いビタミンCと、体内の余分な塩分を排出してくれるカリウム、消化を助けるジアスターゼが豊富な京野菜
- 紫ずきん
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- 粒がうっすらと紫がかった枝豆
- 豆が紫色のずきんを被っているように見えることから、紫頭巾と命名された
- 秋に旬を迎え、甘味が強いのが特徴
- 肝臓の働きを助けるメチオニン、抗酸化作用の高いビタミンEとビタミンB1、食物繊維、血中のコレステロール値を下げるサポニン、女性ホルモンの働きを助けるイソフラボンなどが豊富
- 堀川ごぼう
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- 普通のごぼうが、聚楽第址の堀で巨大化したもの
- 香り高く、柔らかで味が染み込みやすく煮物に適した品種
- 整腸作用のある食物繊維、高血圧予防に効果的なカリウムともに、一般的なごぼうの2.5倍も含み栄養価が高い
- 加茂なす
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- 上賀茂地域で大切に育てられてきた品種
- 風味が良いのが特徴
- 抗酸化作用の高いビタミンC、血圧を下げる作用のあるカリウムを豊富に含み、さまざまな料理に使いやすい
- えびいも
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- 京都ならではの方法で栽培されるサトイモの一種
- 皮に縞模様があり、えびの様なかたちをしている
- 食物繊維とカリウムが豊富で、デトックスと高血圧予防効果が期待できる
- 金時にんじん
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- 「京にんじん」とも呼ばれる、柔らかく甘味の強いにんじん
- 一般的な西洋にんじんよりも濃い赤色で、独特の香りと味わいが特徴
- おせち料理や、お雑煮によく使われる
- 赤色成分の源であるリコピン、抗酸化作用や疲労回復効果のあるビタミン類、生活習慣病予防に効果的なリノレン酸が豊富に含まれている
おわりに:京野菜には、他の野菜にない栄養や健康効果が期待できる!
1,000年以上の歴史を持つ京都で、大量生産のための品種改良を避けて伝統的に栽培されてきた京野菜には、他の野菜にない高い栄養価が期待できます。このため、一般的な野菜に比べヘルシーで、独自の健康効果を持っていると考えられているのです。京野菜が持つ栄養価や健康への効果を理解したうえで、日々の食事に上手に取り入れ、味わってくださいね。
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