サバやイワシと並び、日本人にとって昔から身近な存在だった大衆魚の一種・アジ。たくさん獲れるイメージのあるアジですが、実は天然ものに加え養殖ものも多く流通しています。今回は、一般的に流通している種類や含まれる栄養素などの基本情報と一緒に、養殖アジを取り巻く現状や産地のブランド品情報まで、まとめて紹介します。
身近な魚の代表!スーパーで売られているアジは大体マアジ?
地方によっては「じんだ」「ぜんご」などと呼ばれることのあるアジは、日本近海だけで50種類も生息している身近な魚です。生物学的にはスズキ目アジ科マアジ属に分類され、平均的な体長は40㎝ほどであり、日本周辺や朝鮮半島の沿岸、東シナ海などの比較的暖かい海を好みます。
アジは、大きく沖合を回遊する「クロアジ」と、浅いところに定着する「キアジ」に二分されます。
- クロアジの特徴
- 全体的に黒っぽい色をしていて、体つきが細目
- キアジの特徴
- 全体的に黄色っぽく、体高がやや高く丸っこいかたち
スーパーや飲食店など、日本の市場に流通しているアジの多くは上記のどちらかであり、どちらにも側面の尾に近い部分にゼイゴと呼ばれる特徴的なトゲ状のウロコがあります。
上記以外では、希少性が高く高級食材として刺身にすることの多い「シマアジ」、珍味として知られるクサヤに加工される「ムロアジ」などが代表的です。
アジは栄養たっぷりで健康的な体づくりにおすすめ
アジに多く含まれる栄養素と、それぞれに期待できる健康効果は以下の通りです。
アジに含まれる代表的な栄養素と健康効果
タンパク質
- タンパク質は、人間が生きていくのに欠かせない三大栄養素のひとつ
- 1尾あたりおよそ70g含まれる
- 皮膚や筋肉、髪の毛の原材料となる他、ホルモンなど生きるための基本的な機能の調整、体を動かすためのエネルギーとしても使われる
DHA
- DHAは、ドコサヘキサエン酸という脂質
- アジには1尾あたりおよそ399mg含まれる
- 不飽和脂肪酸の一種であり、青魚に多く含まれている
- 血中のLDLコレステロール値の減少、動脈硬化の予防、能や神経の機能維持・向上に効果的とされる
EPA
- EPAは、エイコサペンタエン酸という脂質
- アジには1尾あたりおよそ210mg含まれる
- DHAと同じく青魚に多い不飽和脂肪酸の一種で、LDLコレステロール値を下げる他にも血流を促進し、血栓や高血圧を予防し、炎症を鎮める作用がある
カルシウム
- カルシウムは、骨や歯を形成する主原料のひとつ
- アジには1尾あたりおよそ46mg含まれる
- 骨粗鬆症や、心臓の筋肉の興奮を抑えることによる心筋梗塞の予防、止血を助けるなどの作用がある
ビタミンB群
- ビタミンB群は、糖質など、エネルギー代謝を助ける栄養素
- 種類別に見ると、アジには1尾あたり以下の量が含まれている
ビタミンBの種類別で見るアジ1尾の含有量
- ビタミンB1
- 0.09mg
- ビタミンB2
- 0.09mg
- ビタミンB6
- 0.21mg
- ビタミンB12
- 5.0mg
新鮮でおいしいアジの特徴
新鮮なアジほどおいしく、栄養も良い状態で含まれています。鮮度が良く、おいしいアジを選ぶためのポイントをまとめていますので、購入する際の参考にしてください。
- 頭が丸みを帯びていて、全体的に肉付きが良い
- 大きさは、脂の乗り具合に偏りの少ない全長20㎝くらいがベスト
- 目が黒く澄んで白濁しておらず、ウロコや体の表面に傷もない
- ゼイゴがとがっていて、ヒレも破れたり損傷したりしていない
- 切り身の表面に透明感があり、弾力と張りがある
なお、表面やヒレに傷が多いもの、パックの中に血や水がたくさん溜まっているものは鮮度が落ちている可能性が高いので避けるようにしましょう。
アジの産地や養殖マアジの収穫量の変化って?
2018年現在、アジの漁獲量は長崎県で、次いで島根県、鳥取県の順に多くなっています。
2018年、都道府県別のアジの漁獲量
- 長崎県…37%
- 島根県…24%
- 鳥取県…5%
- 愛媛県…4%
- 高知県…3%
- 鹿児島県…3%
養殖されるマアジの生産量は近年減少傾向にあり、最盛期の2009年に1,682tあった収穫量は、2013年には1,000tを割り込み957tにまで減少しています。それ以降、マアジの養殖生産量は1,000tを下回る状況が続き、2019年には839tとなっています。
アジは養殖可能|同じく水揚げ量が多いイワシと違う理由は?
積極的に養殖される魚は、ほとんどが以下の条件を満たしています。
- 養殖向きの魚の条件
-
- 天然ものの漁獲量が少ないため稀少価値が高く、高値での取引が望める
- 天然ものの漁獲量が減少し、資源の枯渇が危惧されるため、養殖が求められる
このためイワシなど、漁獲量が多く安価で取引される魚は基本的に養殖されません。しかし、イワシと同じように大衆魚であり、漁獲量も多いアジは、イワシと違って養殖も行われています。
養殖できるアジの種類
養殖対象になるアジの種類は、比較的浅瀬に定着する習性のあるマアジ(キアジ)です。マアジは、餌付けが簡単で成長が早く、120~150gで出荷できるため、養殖がしやすいとされます。全国の鮮魚店やすし店の生け簀を泳ぎ、活〆にして生食されるマアジは、そのほとんどが養殖されたものです。
マアジの養殖方法で主流なのは、稚魚から人の手で出荷できるサイズまで育てる方法です。卵を人工孵化させ、幼生から稚魚、成魚へと育てていく完全養殖はマアジではあまり用いられていません。
一般的なマアジ養殖方法の手順は以下の通りです。
- マアジの養殖手順
-
- 5~7月にかけて、自然界から5g前後の稚魚を漁獲し入手する
- 波の静かな入り江などに網の生け簀を設置し、稚魚を映して育てていく
- 与えるエサはペレットが主流で、8~10か月かけて120gを超えるまで育て出荷する
世界に進出!長崎佐世保のブランド「花美鯵(はなみあじ)」
最後に、長崎県佐世保市が海外向けに展開するブランド養殖アジ「花美鯵(はなみあじ)」の魅力を紹介していきます。
花美鯵は、通常の倍にあたる300gのサイズ感と、鮮度の良さ、安全性を誇る養殖アジです。もともとは、天然ものを至上とする日本ではなく、海外マーケット向けに開発されました。花美鯵は、フグやタイの養殖ノウハウを持つ五島、北松、平戸の漁業者と協力することで、天然ものや他の養殖ものよりも脂の乗った大きくおいしいアジの生産に成功しています。
花美鯵は、およそ1年半かけて、年間を通して脂質が平均で14%になるよう管理・育成し、さらに食品衛生管理の国際規格であるHACCPを取得し、ハワイとロサンゼルスへ向け毎週2~3便、定期的に空輸を行っています。出荷量は年間およそ20tに及び、現地では国内価格の3倍にあたる1匹600円前後で取引されているものの、それでも品薄になるほど人気を集めています。
花美鯵の評価がさらに高くなれば、日本国内でも養殖アジを評価する機運が高まることが予想されます。近い将来、日本でももっと気軽に美味しい養殖アジを食べられる日が来るかもしれません。
▼ 花美鯵|魚市場の挑戦〜ブランド鯵を世界へ〜|佐世保魚市場
気軽にお取り寄せできる養殖アジ
養殖アジをお取り寄せできるショップはあまり多くありませんが、以下のショッピングサイトでは、新鮮でおいしいアジがお取り寄せ可能です。
いけすやの活あじ|静岡
- 静岡県沼津市内浦にある実店舗では、食堂で活アジ丼やわさび葉寿司など、生のマアジを楽しめる
- 売店では、活魚とアジフライを販売
- オンラインショップでも、できたて直送のいけすや活アジフライが楽しめる
▼ いけすや活アジフライ|内浦漁協直営 いけすや公式オンラインショップ
鷹島アジ|長崎
- 津本式・究極の血抜きにより、遠距離発送が可能になった長崎県松浦市鷹島町の養殖アジ
- 天然物とは比べ物にならないほど脂がのった、一味違うマアジを楽しめる
- オンラインショップでは、3尾1組から購入可能
伊勢志摩黒潮ダイニング 活け〆 活アジ(養殖)|三重
- 伊勢志摩の豊富な海の幸を、存分に楽しめるオンラインショップ
- 下処理済のマアジを5尾ワンセットから購入可能。シマアジも取り扱っている
- 尾頭付き、3枚おろし、柵から選べる
▼ 活アジ(養殖・下処理済)|伊勢志摩 海の駅「黒潮」公式オンラインショップ
おわりに:アジは天然ものも養殖ものも、幅広く流通している!
イワシと並び安定した天然漁獲量のあるアジは、本来であれば養殖向きではありません。しかしアジは天然もの、養殖ものともに全国に広く流通しています。飲食店などの生け簀で泳ぎ、活〆にされるものはほとんどが養殖ものです。近年では養殖アジをブランド化する動きもあり、日本で最多のアジ生産量を誇る長崎県ではアメリカ向けのブランド養殖アジの輸出も盛んです。アジを購入するときは、鮮度と一緒に養殖かどうかにも注目してみましょう。
コメント