すっぽんは淡水性の爬虫類の高級食材です。日本でも古くから食べられていますが、現在は養殖のすっぽんの流通が大半を占めていることをご存知でしょうか。
今回は、養殖のすっぽんの魅力について、美味しさと安全性をメインに解説していきます。産地や地方ごとのおすすめの養殖場も紹介するので、観光やお取り寄せの参考にしてください。
日本のすっぽん事情、養殖と天然との違い、養殖方法、寄生虫のこと
すっぽんは、古くは縄文時代から日常的に食べられてきた、日本ではなじみ深い食材です。かつては沼や湖、川などに生息する天然のすっぽんが食べられてきましたが、すっぽんは食べられるようになるまで成長するのに時間がかかることから、かなり貴重で高価なため、一般の人が気軽に楽しめる食材ではありませんでした。
すっぽんは、クセのないさっぱりとした旨味とぷるぷるの食感が楽しめ、すっぽんの栄養価の高さによる滋養強壮効果が期待できます。グルメ食材と健康食材の両面から人気が高いことから、明治にすっぽんの養殖技術が開発されて以降は、「ある程度の運営費用や初期投資はかかるが、儲かる」という理由からすっぽんの養殖が盛んになり、天然のすっぽんはさらに希少価値も高くなりました。
現在、一般に流通するすっぽんの大半が養殖のすっぽんです。ちなみに、養殖のすっぽんは、天然のすっぽんに比べて味や栄養が劣っているわけではありません。
天然のすっぽんと養殖のすっぽんには以下のような違いがあります。
- 天然のすっぽんの特徴
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- 濃い茶色をした個体が多いが、個体差が大きい
- 養殖のすっぽんに比べて爪が鋭い
- 気性が激しく獰猛。攻撃性が高い
- 養殖のすっぽんより運動量が多いため肉質が発達している
- 肉質や味がエサや環境に影響されるため、個体差が大きい
- 天然のすっぽんの旬は冬眠前まで。冬眠する11月〜4月頃は味が劣る
- 寄生虫、食中毒のリスクがある(生肉、生き血などはとくに危険)
- 養殖のすっぽんの特徴
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- 天然のすっぽんと比較して全体的に色が薄く、個体差は小さい
- 天然のすっぽんに比べて爪が鋭くない
- 天然のすっぽんに比べると温厚な性格
- 天然のすっぽんに比べると、肉質がやわらかく臭みが少ない
- 天然のすっぽんに比べると、肉質や味が安定している
- 加温養殖のすっぽんは1年を通して肉質がほとんど変わらず、露地養殖のすっぽんは天然のすっぽんと同じく冬眠前までが旬
- 天然のすっぽんに比べて、寄生虫や食中毒のリスクがかなり低い
養殖場の環境、飼育方法
日本のすっぽん養殖では、露地養殖と加温養殖の2つの養殖方法が一般的です。露地養殖と加温養殖を併用して育成状態を管理することもあります。
- 露地養殖の特徴
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- 天然のため池や湖、コンクリート製の池などを使って、本来の自然環境に近い状態ですっぽんを飼育する養殖方法
- 天然のすっぽんと同様に冬眠をさせながら成長させるので、出荷可能な大きさになるまで3年から4年程度かかる
- 冬眠が必要なため、天然のすっぽんと同じ冬眠前が旬になる
- ゆっくりじっくり成長させるので肉質が良くなる
- 加温養殖の特徴
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- 温泉や工場などの温排水、ボイラーや電熱加熱による加温により水温を管理してすっぽんの成長を促進する養殖方法
- 加温養殖のすっぽんは、1年半から2年程度で出荷可能な大きさに成長する
- 1年中が旬であり、1年を通して同じ肉質を楽しめる
- 露地養殖よりさらにリスクが少なく、生産状態も安定しやすい
- 露地養殖に比べて味が落ちるわけではないが、促成飼育という点で露地養殖とは肉質が違ってくる
すっぽんの飼料、エサ
天然のすっぽんは、自分でエサを探して捕食します。運動量が多く筋肉が発達して余分な脂肪が落ちるので、しっかりした肉質を楽しめますが、すっぽんは雑食のため食事内容に個体差があり、肉質も土やエサの内容で変わってきます。
そのため、天然のすっぽんは臭みや味の低下が起こりやすく、めぐまれた生育環境で育ったすっぽんを見つけることはとても難しいです。また、食べているものが原因で、寄生虫や病気のリスクも生じてきます。
養殖のすっぽんは、毎日きちんと管理したエサを食べているため、病気や寄生虫のリスクが少ないです。
エサはすっぽん専用に配合された飼料を使いますが、材料に関しては養殖地、養殖業者によって違うので、食べるとき、お取り寄せするときの参考にもなります。
- 養殖すっぽんのエサ、飼料の材料の例
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- 米ぬか
- 小魚、魚介類(牡蠣、どじょう、ざりがに、うぐい、じゃこ、いりこ、しゃこなど)
- 野菜、果物類(にんにく、アスパラ、オリーブ、りんご、パイナップル、パパイヤなど)
- 漢方、サプリメント
すっぽんの寄生虫、食中毒のリスク
天然のすっぽんには、エサや生育環境による寄生虫や食中毒(サルモネラ菌など)のリスクがあります。天然のすっぽんの生食や生き血を飲むことは絶対にしないでください。
養殖のすっぽんの生き血は問題ないとされることありますが、養殖のすっぽんであっても、育成環境によっては寄生虫や食中毒のリスクがあります。とくに海外から輸入したすっぽんによるトラブルが多いので、お取り寄せするときには気をつけてください。
すっぽん養殖が盛んな地域|お取り寄せ、観光におすすめの産地、養殖場一覧
すっぽんは変温動物であることから寒い地域での育成が難しいことが多いです。日本ですっぽんの養殖が盛んな地域は、西日本から九州にかけてです。また、露地養殖に関しては、水質などの環境に恵まれた地域である必要もあります。
すっぽんを食べたい、お取り寄せしたいときにおすすめなのは以下の産地、地域です。
静岡(浜名湖)
静岡県浜松市にある浜名湖は、日本で初めてすっぽんの養殖に成功した地域であり、日本一の名産地としても知られています。浜名湖の自然環境を活用した露地養殖で育てたすっぽんは、肉質がやわらかく、余分な脂を落とした上品な味わいを楽しめます。
臭みはまったくなく、脂と肉の味わいもすっきりしているので、すっぽん本来の旨味を楽しめるでしょう。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
服部中村養鼈場(ようべつじょう)
- すっぽん養殖の元祖
- 人工的な薬剤を使わず、有機飼料で育成
- 上品な味わい、やわらかい食感の料亭で使うようなすっぽんを楽しめる
- 料理店、ネットショップがあり、工場見学も可能
- メニューも豊富なので色々な楽しみ方ができる
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群馬
群馬県では、栄養価を高めることで、美肌効果を得やすくなると売り出している美流すっぽんという女性をターゲットにした養殖すっぽんが有名です。
温泉が豊富な群馬県ならではの温泉(加温)養殖によるすっぽんで、吾妻郡嬬恋村静かな環境のもとで大切に育成されています。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
美流すっぽん|群馬県すっぽん加工販売協同組合
- 養殖、加工、販売まで一貫生産するので、高品質のものを比較的安く入手可能
- 飼料に漢方を配合することで、すっぽんの栄養価を高めている
- 嬬恋村にあるので温泉観光と一緒に楽しめる
- ネットショップでは、すっぽんの肉、生き血、サプリメントが入手可能
- 家庭ですぐ楽しめる「すっぽん鍋セット」はお取り寄せにおすすめ
京都
まる鍋など、京都では京料理としてすっぽんを食べる文化が根付いています。周辺県、市町村のすっぽんを取り寄せることも多いですが、京都府内にもいくつかすっぽん養殖場があり、規模が小さいながらも品質が良いと評価を得ています。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
丹の里水産
- お店だけでなく、お取り寄せでも新鮮なすっぽんが楽しめる
- お取り寄せでは、冷蔵真空パック(加熱用)と冷凍ものがあり、料理によって使い分けができる
- お店ではすっぽん鍋のフルコース、生き血が人気
- お店で食べて家族用に持ち帰る人もいる
大分
大分は、天然のすっぽんの産地としても有名で、すっぽんの養殖も盛んです。温泉県である大分ならではの良質な温泉を使った温泉(加温)養殖が行われていて、肉質がやわらかくて香り高く、脂がのっているのに臭みがない、上品なすっぽんを楽しめます。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
景勝 裏耶馬溪のすっぽん
- 景勝地としても有名な裏耶馬渓の温泉を使った養殖すっぽん
- 卵から育てるため寄生虫などのリスクがかなり低く、すっぽんへのストレスも少ない
- 注文を受けてからさばくため新鮮
- 脂がのっているが、上品ですっきりした味わい
安心院すっぽんセンター
- 安心院の源泉温泉を使った養殖すっぽん
- 全国の料亭、お土産ショップ、すっぽん愛好家が利用している
- 加工した日に発送するので、通販でお取り寄せしても新鮮
- 切り身以外では、温めるだけのお手軽すっぽんスープも人気
長崎
長崎県は、九州のなかでもとくに温暖な気候であるため、昔から天然のすっぽんを楽しむ文化がありました。長崎の郷土料理のひとつ「卓袱料理」では、すっぽん料理があります。
海と山に囲まれて肥沃な土地があることから、すぐれたすっぽんの養殖地としても評価されていて、長崎淡水すっぽん養殖場や浦野すっぽん養殖場など、全国的に見ても評価が高い養殖場があります。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
長崎淡水すっぽん養殖場
- 丁寧に育てた3年ものの養殖すっぽんのみを販売
- 人工のため池で自然に近い環境を再現した養殖場で育成
- 3年かけて冬眠を重ねているため濃厚で深い味わいがあり、脂も栄養もたっぷり
- 大ぶりでやわらかい肉質で、品質が安定している
- 高級旅館や老舗料亭で出されるレベルのすっぽんを家庭でも楽しめる
浦野淡水すっぽん養殖場
- 夫婦2人でやっている温かみのあるお店
- 無農薬のかぼちゃを朝夕2回与えることで、肉質を良くして脂の味に深みを出している
- 大きな会社ではないがネットショップの評判は高い
- 活きすっぽん、冷凍、切り身など、すっぽんの料理経験にあわせて商品が選べる
佐賀
佐賀県も九州のなかでは気候が温暖な地域です。県をあげてすっぽんグルメを推薦していることもあり、すっぽん目当てに観光に来る人もいます。佐賀の豊かな自然と確かな養殖技術をあわせたすっぽん養殖場がたくさんあります。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
大和養殖有限会社
- 水質の良い清流で育てているので臭みがなく、肉質が良い
- 1万坪の敷地で育てているため、すっぽんのストレスが少ない
- 自然豊かな静かな環境もすっぽんのストレスの軽減に役立つ
- 活きすっぽん、冷凍すっぽんのほか、卵の焼酎漬けなど珍しい商品もある
鹿児島
鹿児島県は、各魚類の養殖が盛んであり、すっぽんに関しても静岡や大分ほどではありませんが、評価が高いいくつか養殖場があります。自然豊かで土壌の肥沃なため、すっぽんの肉質も評価されています。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
奥さつますっぽん養殖場
- 水が豊富で温暖な気候で人里離れた川内川のほとりですっぽんを養殖している
- 贈り物としての人気も高く、品切れになってしまうことも多い
- 品質を高めるため、すっぽんのストレス対策にも力を入れている
- 活きすっぽんのお取り寄せが可能
熊本
水の都とも称されている熊本では、阿蘇地域のきれいな水と温暖な気候がすっぽんの養殖に向いているということで、すっぽん養殖場もいくつかあります。
どの養殖場も、豊富できれいな水源と温かい気候を利用した養殖方法で高品質のすっぽんを育てることに力を入れています。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
井寺スッポン養殖場
- 農業でも評価が高い菊池水源流域のすっぽん養殖場
- 育成環境だけでなく、血統にも力をいれたすっぽん
- 薬剤などを使わず最高級の魚粉をベースに天然素材の栄養を配合した飼料で養殖している
- ひろくゆったりした環境、地下水のみの高い水質の水で育てている
小川スッポン養殖場
- 露地養殖で育てることで、旨味と栄養たっぷりの養殖すっぽんに育てている
- オス、メスを選んで購入できる
- 活きすっぽん以外にも、冷蔵切り身、冷凍切り身、生き血が購入可能
- 生き血は子どもやお酒が苦手な人も飲めるように、りんごジュース割にしている
沖縄
沖縄県自体のすっぽん養殖の歴史はあまり長くありませんが、沖縄県産のパパイヤやパイナップルを飼料に配合したパインすっぽんが登場してから、少しずつ沖縄すっぽんの人気が高まっています。
気温の変化が少なく、日照時間の長い沖縄県は、すっぽん養殖にとって非常に良い環境であり、通常よりも短い期間で出荷できるようになります。
お取り寄せ、観光におすすめの養殖場
すっぽん館(オキハム)
- 養殖用の池の砂をサンゴ砂にすることで、すっぽんの泥臭さをなくしている
- サンゴ砂を使うことは、すっぽんのミネラル補給や水質安定にも役立つ
- 地中深くの地下水を使うことで寄生虫リスクを極限まで下げている
- レストラン、お土産ショップ、ネットショップで購入可能
養殖すっぽんの食べ方|家庭で食べるのにおすすめの料理は?
最近は、ネットショップが充実したことで全国のすっぽんをお取り寄せしやすくなりました。冷凍技術やパッキングの技術の向上により、切り身での購入も可能になってきています。
すっぽんをさばいた経験があれば活きすっぽんを購入してもいいですが、下処理など技術が必要なことも多いので、経験がない場合は切り身を購入することをおすすめします。切り身であれば、袋を開けて料理するだけなので簡単です。
すっぽんの美味しさを余すことなく楽しめる料理は、「すっぽん鍋(まる鍋)」でしょう。すっぽんの出汁の旨味、肉と脂の旨味と栄養をたっぷり楽しめます。シメの雑炊は最高ですね。
切り身で購入するとレシピがついてくることもありますし、すっぽん鍋セットで販売していることもあるので、購入時に確認しましょう。
すっぽん鍋以外では、網焼き、唐揚げ、煮物、生き血割り、ゼリーなどは家庭でも手軽に楽しめます。
家庭で楽しめるおすすめのすっぽん料理
- すっぽん鍋(まる鍋)
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- すっぽんの旨味と栄養をすべて楽しめる
- すっぽんから出た出汁の旨味は格別。雑炊やうどんなどにも使える
- 強火でアクをとりながら作るのがポイント
- 鍋に味をつけても良いが、水炊き風にしてポン酢で食べるのもおすすめ
- すっぽんの唐揚げ
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- すっぽん鍋とは違った肉質、食感を楽しめる
- 下味はさっぱし仕上げるときは塩コショウ、こってり仕上げたいときはにんにく、塩、しょう油、酒、生姜で
- 下味をつけたら薄力粉か片栗粉をまぶして揚げるだけでOK
- 鶏の唐揚げのようにレモンを添えてもOK
- 小骨がある場合があるので注意
- すっぽんの網焼き
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- すっぽんの切り身に塩を振り、網焼きにするだけ
- 香りがのぼるので、食欲をそそられる
- お酒のつまみにぴったり
- カロリーが気になる人にもおすすめ
- すっぽんの煮物
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- すっぽん煮とは、酒をたっぷり使った鶏肉などの煮物のこと。すっぽん鍋の調理法が由来
- すっぽんの身を酒、砂糖、みりん、しょう油で煮込んで煮詰める
- 生姜汁を仕上げに入れて完成
- こってりした味付けですっぽんを楽しみたい人におすすめ
- すっぽん生き血割り
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- 必ず飲食可能な生き血を使うこと
- 生き血単独では固まりやすく飲みにくいので通常は焼酎やホワイトリカーなどで割る
- 赤ワインで割っても美味しい
- アルコールが苦手な場合はリンゴジュースやトマトジュースで割ってもOK
- すっぽんゼリー
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- すっぽんのスープを固めてゼリーにしたものを食べる料理
- すっぽんスープにゼラチンを入れて、トマトやオクラなどを入れると前菜として楽しめる
- 生ハムをみじん切りにして入れるとお酒やワインのお供にぴったり
おわりに:養殖すっぽんは美味しくて安全。旅先のグルメやお取り寄せ、贈り物にぴったり
すっぽんは養殖、天然ともに高級食材ですが、品質と生産が安定している養殖のすっぽんは比較的安く購入できます。旅先のグルメとしてはもちろん、一般家庭でも料理可能なので、お取り寄せにもぴったりです。
すっぽん養殖場のなかには見学できる場所もあるので、アクティビティや観光にも使えます。すっぽん養殖は、健康や美容面の人気の再燃から改めて産業としても注目されています。今後は、ますます興味深い事業が出てくることが予想されます。まだすっぽんを食べたことがない人は、この機会にぜひ食べてみてください。
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