日本人にとって身近であり、長く食卓を彩り続けてきたマグロ。そんなマグロも近年では天然ものの漁獲高減少が続き、2002年以降は養殖がされるようになってきました。
今回は養殖マグロの現状や天然ものとの違い、通販で楽しめるおすすめブランドマグロのことまで、準に解説していきます。
マグロの養殖に注目が集まっているのはなぜ?
日本で消費されているマグロは、主に「クロマグロ」「ミナミマグロ」「メバチマグロ」「キハダマグロ」「ビンナガマグロ」の5種類です。
まずはそれぞれの種類の特徴や生息地域について、以下にみていきましょう。
代表的な5種類のマグロについて
- クロマグロ
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- 北半球の温帯から亜熱帯の海域にかけて生息する種類
- さらに太平洋マグロ、大西洋マグロの2種類に分けられ、日本近海で獲れるものは太平洋クロマグロにあたる
- 脂乗りが良く、他の種類と比較しても深みのある味わいが特徴
- さまざまな用途で食べられていて、養殖の対象にもなっている
- ミナミマグロ
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- 別名「インドマグロ」とも呼ばれる種類で、南半球の温帯域に生息する
- クロマグロに似た見た目だが、クロマグロに比べ小ぶりなのが特徴
- 脂が乗り、味も濃いためクロマグロに次いで日本人に愛されている
- 海外からの輸出が盛んな他、養殖の対象にもなっている
- メバチマグロ
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- 「バチ」と呼ばれることもある種類
- 世界中の熱帯から亜熱帯の海域に生息している
- 脂が少ない性質だが、濃い味わいの赤身が美味
- クロマグロなどと比べて安価なことから、スーパーや飲食店で広く流通している
- キハダマグロ
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- 世界中の熱帯から亜熱帯にかけて生息する種類
- 背びれが黄色く、小ぶりなことが特徴で、特に関西地方で好んで食べられている
- 脂は少なく、あっさりとした癖のない味わいで、特に缶詰に使われる割合が高い
- ビンナガマグロ
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- 「ビンチョウマグロ」「トンボ」とも呼ばれる種類で、太平洋、インド洋、大西洋の温帯域に生息する種類
- 他の種類に比べて小型で、寿司ネタの「ビントロ」として知られる
- 肉は白っぽく柔らかいのが特徴で、生食するとあっさりとした中にうま味を感じられる
上記のうち、日本で養殖に注力されているのは最も味が良いとされるクロマグロです。かつては海で天然のクロマグロの稚魚を捕獲し、育てて出荷するかたちで養殖が行われていましたが、2002年に近畿大学が完全養殖に成功し、近年では天然もの、稚魚を捕獲して育てた養殖ものに加え、近畿大学が確率した以下の主峰で完全養殖されたクロマグロも流通するようになっていきています。
近畿大学のクロマグロ完全養殖の方法
- 5年以上生育し、全長2m体重200㎏以上になったクロマグロを親魚とする
- 親魚が産卵、受精させた卵を採集して人工的に孵化させ、人の手で育て始める
- 孵化からおよそ20日後、稚魚となったクロマグロを海上の網いけすへ移す
- そこからおよそ3年かけて全長3m、体重30㎏以上まで育て出荷する
養殖クロマグロの出荷量は増加傾向!九州や四国が多い
平成23年から令和1年までの、養殖クロマグロの出荷数の推移は以下の通りです。
平成23年 | 190,000尾 |
平成24年 | 177,000尾 |
平成25年 | 197,000尾 |
平成26年 | 230,000尾 |
平成27年 | 226,000尾 |
平成28年 | 209,000尾 |
平成29年 | 247,000尾 |
平成30年 | 273,000尾 |
令和1年 | 302,000尾 |
多少減少した年があるものの、平成20年代のはじめ頃と比較すると、養殖クロマグロの出荷量が着実に増えてきているのがわかりますね。ちなみに、養殖クロマグロの出荷日数が特に多い地域は長崎県、鹿児島県、高知県、三重県、大分県の5県です。いずれも温暖な気候で知られる地域であり、特に九州地方からの出荷が多くなっています。
養殖マグロは天然ものとどんな違いがある?
養殖マグロと天然もののマグロ、それぞれの特徴を比べると以下のようになります。
- 養殖マグロの特徴
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- 生け簀でエサをもらって育つため、味のバランスを考えて育てられる
- 与えるエサの配合により、脂乗りや赤身の味わいを調整することも可能
- 同じような質、大きさの個体を安定して育て、出荷することが可能
- 天然マグロの特徴
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- 常に泳ぎ、鰓から酸素を取り入れているため身が赤く、筋肉質になる
- うま味が強く、まぐろ本来の味わいを楽しめるとされる
- 棲んでいた海域の水質、栄養状態により質が変わってくる
味に関しては、天然ものと養殖ものの双方に違った魅力があると言えます。
筋肉質で弾力があり、濃い味を好む人にとっては天然もののマグロの方がおいしく、脂身と赤身のバランスが良い身を好む人には、養殖マグロの方がおいしく感じられるでしょう。
天然ものと養殖マグロ、2つを比較した場合の最も大きな違いとしては、養殖マグロの方がより安価に、安定的な供給が可能だという点にあります。双方の良いところをわかったうえで、各々の経済状況や好みに合わせて美味しくいただけば良い、と理解しておいてくださいね。
名産地から届く!養殖マグロのおすすめ通販
ここでは、日本各地から通販でお取り寄せ可能なおすすめ養殖マグロを3種類、それぞれの特徴と一緒に見ていきましょう。新鮮で味が良く、お手頃価格のものだけを集めましたので、ぜひ購入を検討してください。
愛媛の「伊達マグロ」
- 四国南西部、愛媛県宇和島市で養殖されているブランドホンマグロ
- きめ細やかな身はねっとりとした食感で、まろやかなコクとうま味、あっさりとした脂を感じられる逸品
鹿児島の「薩摩クロマグロ」
- 鹿児島県沖で吊り上げたマグロの養魚を、2007年に農林水産大臣賞の最高賞である天皇賞を受賞した協業体が生け簀で育てあげた養殖マグロ
- 抗生物質などを一切使わず、サバなどを与えて天然ものに近い環境で養育した後、活〆にして急速冷凍し、真空パックにしてから出荷している
- 赤身はしっとりと、びっしりと霜が降りとろけるような食感の大トロ、この2つのうま味を両方楽しめる中トロと、各部位ごとに魅力がある
高知の「大月産本マグロ」
- 高知県で唯一ホンマグロの養殖を行う、大月町産の養殖マグロ
- 黒潮の恵みをいっぱいに受けて育ったマグロには赤身まで脂乗りが良い、全身トロのような味わいが特徴
- 水揚げした後は戦場で処理され、新鮮な状態で販売している
大手水産会社が開発する養殖マグロブランド
近年では自治体や地域の漁協、近畿大学だけでなく、水産加工品にかかわる一部企業においても、マグロの養殖が盛んに行われています。
マルハニチロ、株式会社キョクヨー、ニッスイの3社による養殖マグロブランドについて、それぞれ見ていきましょう。
マルハニチロの完全養殖マグロ「BLUE CREST」
- 1980年代後半から完全養殖の実現に向け取り組んできた、マルハニチロの完全養殖のブランド本マグロ
- 奄美大島をはじめ全国5か所に、日本でも最大級の大型生け簀を設置した養殖場を保有
- ストレスのない環境で生育し、とろけるような食感とすっきりした後味の赤身、脂のうま味を堪能できる中トロ・大トロの販売を行っている
株式会社キョクヨーの「本マグロの極 つなぐ<TSUNAGU>」
- 魚に強い食品会社であるキョクヨーが、配合飼料のトップメーカーと組んで作り上げた完全養殖の本マグロ
- 宇和海エリアに養殖場を保有し、孵化から出荷に至るまでマグロを育成
- クロマグロ本来が持つ色、肉質、風味を楽しめる程よい脂乗りがあり、色餅が良い身を主に飲食店やスーパーへ出荷している
ニッスイの「喜鮪®(きつな)金ラベル」
- ニッスイが鹿児島県は甑島(こしきじま)の事業所で育て、出荷する完全養殖本マグロ
- 自社の甑島事業所に保有する養殖場で育てたマグロを、隣接する加工所でチルド配送できる状態にまで加工し、各店舗へ送り出すところまで一貫して行っている
- 通常のマグロよりもビタミンE含有量が高く、うま味成分であるイノシン酸含有量も2割近く向上させた、美しい色の身が特徴
おわりに:天然ものと異なる魅力がある養殖マグロ!通販で名産地や、大手企業が作り出す養殖ものを味わってみよう
漁で収穫される天然ものに比べて安価で、脂身とうま味のバランスの良い高品質なマグロを出荷できるのが、養殖マグロならではの強み。このため近年、各地域の養殖事業者はもちろん大手の水産関係企業もマグロの養殖事業に乗り出し、相次いでブランド化を行っています。そんな養殖マグロの多くは、スーパーや通販で一般家庭でも購入可能です。各社自慢の養殖マグロの味や肉質を、ぜひご自身の舌で確かめてみてくださいね。
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