そのまま食べても、スイーツやお料理に使ってもおいしい桃。なじみ深い果物ですが、栄養価について理解している人は少ないのではないでしょうか。
今回は桃の栄養価と健康への効果を、種類ごとの特徴やおすすめの食べ方、食べるうえでの注意点と一緒に解説します。旅先のグルメやお取り寄せを楽しむときの参考にしてください。
桃にはどんな種類があるの?
桃とは、バラ科モモ属の木になる果実のこと。原産地である中国から、縄文時代には日本にも伝わり、自生していたと考えられています。
ただ、食用として栽培がされるようになったのは江戸時代に入ってから。
その後、明治時代に中国の水蜜桃という桃の輸入が始まり、これを品種改良したものが岡山県や山梨県、福島県、長野県、和歌山県などで栽培されるようになったと言います。
桃は、おおまかに「白桃系」「白鳳系」「黄金桃系」の3系統に分けられますが、各地に分布し、品種改良を重ねるうち数えきれないほどの種類が誕生しました。
以下に、日本で流通している種類を中心に代表的な桃の品種とその特徴を解説します。
桃の種類
- 川中島白桃
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- 白桃系のうち、8~9月に旬を迎える晩生種
- 全体的に濃い赤色の皮、白い果肉をした硬めの肉質の種類で、250~300gとやや大ぶり
- 糖度が高くとても甘い
- 清水白桃
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- 白桃系のうち、特に皮・果肉の白さが際立つ種類
- 「桃の女王」と称されるほど見た目が美しく、完熟しても白さを保つ
- 緻密でやわらか、ジューシーで甘い高級品で旬は7~8月
- 浅間白桃
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- 1974年から山梨県で愛される品麩
- はじめは硬いが、時間が経つにつれ果肉が徐々にやわらかく、味わい深くなっていく
- 果汁たっぷりで濃厚な味わい
- 旬は7~8月
- さくら白桃
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- 白桃系の晩生種
- 8~9月下旬までと、晩生種のなかでも特に実がなるのが遅い大ぶりな品種
- 皮は薄い赤色
- 収穫直後はカリカリした食感で日持ちがし、時間が経つと柔らかくなる
- 白鳳(はくほう)
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- 桃のなかでも最もポピュラーな品種
- さまざまな品種をかけ合わせて作られた高級品
- 皮も果肉も白に赤やピンクを色付けしたような美しい見た目で、酸味が少なく上品な甘さを味わえる
- 果汁が多くジューシーで、旬は7~8月
- 日川白鳳
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- 全国的に栽培されている、白鳳系品種
- 200~250gの中玉で丸く、熟すごとに濃い赤色の美しい見た目になっていく
- 7~8月が旬で日持ちが効き、ジューシーで酸味が少ない味わい
- あかつき
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- 白桃と白鳳をかけあわせて作られた品種
- クリーム色の果肉に、うっすらと赤色が入った美しい見た目
- 日持ちに優れ、柔らかくもしっかりした独特の歯ごたえを楽しめる
- 旬は8月
- ちよひめ
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- 160~200gとやや小ぶりな極早生種で、5~6月に旬を迎える
- 皮も果肉も、白にピンクや赤が入ったような色づき方をする
- しっかりした食感とたっぷりの果汁、上品な甘味がある
- 黄桃(きもも)
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- 「おうとう」とも呼ばれる、黄色い皮・果肉の品種
- 熟しても果肉がしっかりした硬さを保つため、シロップ漬けの缶詰など加工品に向くとされる
- 黄金桃
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- 黄桃と同様に黄色い皮・果肉を持つが、生食に適した甘さとジューシーさを持つ品種
- つややかでしっかりした果肉は、濃厚な味わい
- 300gとやや大ぶりで、8~9月に旬を迎える
- 蟠桃(ばんとう)
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- 中国原産の、平たい楕円形の桃
- 100~200gと小ぶりで、皮の色は濃いが、果肉は白桃系のものと黄桃系の両方が存在する
- 独特のみずみずしさと甘味を味わえ、7~8月に旬となる
- ネクタリン
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- 正式な和名は「ズバイモモ」、別名「油桃(ゆとう)」
- 全体的に黄色く、産毛のないつるっとした表面が特徴
- 甘酸っぱくて果肉が多く、7~9月に旬を迎える
桃の栄養に期待できる効果って?
桃には、主成分である水と果糖をはじめ、食物繊維やミネラル類、ポリフェノールなどの栄養成分が含まれています。
それぞれの健康への効果について、以下に見ていきましょう。
果糖
桃の甘味成分であるフルクトースは、砂糖の1.5倍の甘味を感じさせる果糖の一種。
体や脳を動かすエネルギー源であり、糖類のなかでも吸収・代謝の早い種類です。このため、疲労時の栄養補給で即効性を発揮し、迅速な疲労回復を促します。
ペクチン
桃に含まれる、水溶性食物繊維の一種です。体に入り腸に到達すると、便の排出促進と整腸作用により、以下の健康効果をもたらしてくれます。
- ゲル状の膜のようになって便を覆い、スムーズな排泄を促す
- 腸内を移動する間、コレステロールや糖を吸着し、体に吸収されるのを防ぐ
- これらの作用により便秘を解消し、腸内環境を整えて消化機能を高める
- 整腸作用により、腸内環境が影響する感染症への免疫機能を向上させる
- 腸内環境の乱れによる肌荒れ、大腸がん発症リスクを減らし、体調を改善する
カリウム
体内の塩分・水分を適切な量に保つ作用のある、ミネラル類。
腎臓の働きを助けて余分な水、ナトリウムを尿として排出し、筋肉や神経の機能を回復させてくれるため、以下のような健康効果が期待できます。
- 高血圧とむくみの解消
- 長時間の運動による筋肉のけいれん、障害の解消
- 高血圧や動脈硬化など、生活習慣病の発症を防ぐ
ナイアシン
水に溶けだす性質を持った、水溶性ビタミンの一種。体内でのエネルギー変換・代謝を助ける役割を担い、以下の効果を現します。
- 脂質や糖質のエネルギー変換、代謝を補助する
- 血管を拡張させ、全身の血流と新陳代謝を促進する
- 皮膚や粘膜を健康で美しい状態に保ち、冷えを改善する
カテキン
お茶に含まれることで知られる、ポリフェノールの一種。
加齢による細胞の劣化、酸化を防いで若々しい状態に保つ抗酸化作用があり、以下の健康効果をもたらします。
- 血管や内臓、肌や粘膜の細胞に作用して若々しい状態に保つ
- 抗酸化作用により、がんや生活習慣病などの疾病の発症を防ぐ
- 肌や髪を美しい状態に保ち、アンチエイジング効果を発揮する
- 肌や粘膜が正常な状態に保たれることで、感染症への抵抗力が向上する
桃を美味しく食べるポイントとは?
食べごろの桃は、感触で見分けることができます。
市販の桃は完熟前の状態で販売しているので、軽く触れてやわらかさを感じるようになるまで、直射日光の当たらないところで常温保存し、追熟させてください。
食べごろになったら、食べる2~3時間前に冷蔵庫に入れて実をひきしめます。
よく冷えたら、流水のもと手で皮の表面を擦るようにして産毛を取り除いていきます。表面の感触が「キュッキュ」とした感じに変わってきたらOKです。
桃には皮の部分にも豊富な栄養が含まれ、皮と実の間には糖度の高い果肉がありますから、できれば皮ごと食べるようにしてください。
皮を剝きたいときは、溝に包丁を一周入れて半分に割ってからはがすようにして剝くか、トマトのように湯向きにすると崩れにくいです。
種は、溝に包丁を一周入れたうえでアボカドを割る時のように上下の果肉をねじり、包丁を指して取り除くと果肉が崩れるのを防ぐことができますよ。
おわりに:皮ごと食べれば、桃の栄養を余さず摂れる!
桃には果糖、ペクチン、カリウム、ナイアシン、カテキンなどさまざまな栄養成分が含まれています。ただし、これらの栄養成分には果肉よりも、皮に多く含まれているものもあります。適切な管理と下処理の方法を理解したうえで、できれば皮ごと桃を食べてくださいね。
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