ごはんのお供に、料理やお茶の風味付けにと幅広く使われる梅干しは、日本人にとってなじみ深いお漬物ですよね。
今回は梅干しがどんな食材なのか、梅そのものが持つ栄養・効能や梅干しを食べることによる健康効果と一緒に、改めて理解していきましょう。
旅先のグルメやお取り寄せ、贈り物を楽しむときの参考にしてください。
梅ってどんな植物?
まずは梅干しの主原料である、梅という植物について解説していきます。
バラ科サクラ属の植物である梅は、3世紀ごろに中国から日本へ入ってきたと考えられています。現在、日本で栽培されている代表的な梅の品種は、以下の通りです。
日本で栽培されている主な梅の品種
- 南高梅
- 大きな粒と柔らかく肉厚な果肉が特徴的な、和歌山県の代表品種
- 古城
- 「こじろ」と読む。主に和歌山県で作られている小ぶりなサイズの梅
- 白加賀梅
- 「しろかがうめ」。関東を中心に生産されている。南高梅よりやや小ぶり
いずれも5~6月にかけて実をつけますが、未熟な青梅の状態で食べると毒性があります。
また黄色く完熟させても甘くならないため、生食には向きません。
このため、日本でははじめ生菓子の材料として使われていましたが、その後は時を経て漬物の材料として使われるようになっていきました。
日本における梅の実の使われ方の変遷
- 奈良時代
- あんずなどと同様、生菓子の材料として主に使われた
- 平安時代
- 梅の健康効果が知られるようになり、薬・保存食として塩漬けされるように
- 戦国時代
- 鎌倉時代以降、保存食や戦場での消毒、食中毒や伝染病の予防に使われる
- 江戸時代
- 梅干しが一般化し、庶民の食卓にも梅干しのしそ漬けが普及
平安時代以降、干して塩漬けにする梅干しが主流の食べ方となった梅の実ですが、江戸時代後期になると梅肉エキスのようなものや、梅を甘くして楽しむ甘露梅も誕生しました。
梅干しってどんな食べもの?
梅についてわかったところで、ここからは梅干しについてさらに深く知っていきましょう。
梅干しはもともと、梅雨に収穫した梅の実を食べられる状態にしておくため、大量の塩を使って作る保存食でした。
このため、昔はかなり塩分濃度の高い食べ物でしたが、保存技術の進歩や味覚の変化に伴い、近年では8~12%の減塩タイプが主流になってきています。
また保存できる期間にも変化が現れ、当初は数十~数百年単位で長期の保存が効くものでしたが、近年では長くとも半年程度の賞味期限が設定されるのが一般的です。
梅干しの味や漬け方には地方によって特色があり、代表的なものでも10種類以上のパターンがあると言われています。そのうち、一部を以下にご紹介しましょう。
- 白梅干し
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- 梅に塩、焼酎を良くもみ込んだ後、容器にフタをして4~5日寝かせる
- 天気の良い日を見計らって梅をざるに開け、表・裏を3日かけて天日干しにする
- 梅特有の風味を楽しめるうえ、比較的簡単にできる作り方
- しそ梅干し
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- 塩漬けにした梅干しと、あく抜きした赤しそを材料として用意する
- 梅干しと赤しそを同じ容器で漬け込み、梅にしその色素を沈着させる
- 手間はかかるが、しその殺菌効果でより長期の保存が可能になる作り方
- カリカリ漬け
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- 梅の実を天日干しにせず、カリカリした食感をのこしたまま梅干しにしたもの
- 近年では、小さな梅の実をこの方法で漬けた「カリカリ梅」が人気
しそ梅干しと同じ要領で、塩漬けにした梅干しにかつおや昆布などの出汁で味を付けたり、はちみつを入れて酸っぱさを軽減した梅干しも一般的に製造・販売されています。
梅干しを食べることで得られる健康上のメリットは?
梅干しにはカルシウム・鉄・リンなどのミネラル類、そしてクエン酸・リンゴ酸などの有機酸が豊富に含まれています。
このため、梅干しを積極的に食べれば、以下のような健康効果を得られると考えられます。
歯や骨の強化、骨粗鬆症予防
カルシウムをはじめとするミネラル類は、私たちの体をつくるのに欠かせません。
梅干しに含まれるカルシウムの量はリンゴの約4倍、鉄の量はミカンの約6倍と非常に多く、さらにクエン酸にはカルシウムの体への吸収を促進する作用があります。
梅干しを積極的に食べれば、骨と体づくりに役立つ栄養を効率的に摂取できるのです。
疲労回復、老化予防、食欲増進
梅干しに含まれる有機酸には、種類ごとに以下のような健康効果が期待できます。
- クエン酸
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- 唾液や胃液など消化液の分泌を促進し、食欲を増進する
- 消化酵素の働きを高めて、胃腸での消化吸収を助ける
- 糖の代謝を促進して、疲労回復を促進して体の老化・劣化を防ぐ
- 腰痛や肩こりなどを緩和する
- リンゴ酸
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- 糖の代謝を促進して、疲労回復を促進して体の老化・劣化を防ぐ
- 腰痛や肩こりなどを緩和する
- ピクリン酸
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- 腸の働きを活性化させ、便通を改善する
- ピルビン酸
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- 肝臓の働きを助け、機能を強化する
梅干しを積極的に食べて有機酸を摂取すれば、食生活の改善や倦怠感・疲労感の軽減、脂肪や糖の代謝促進効果が得られ、生活習慣病の予防にも役立ちます。
美容、肌のアンチエイジング
またクエン酸により肌の代謝促進、体の老化・劣化を防ぐ作用が得られることから、シミ・シワの予防やアンチエイジング効果も期待できるでしょう。
おわりに:梅干しには老化防止、疲労回復などの健康効果が見込める
梅のみを塩漬けにし、乾燥させて作る梅干しは、鉄やカルシウムなどのミネラル類、クエン酸・リンゴ酸などの有機酸を豊富に含む食品です。このため、積極的に食べることで体や骨の強化、疲労回復、食欲増進、アンチエイジング効果が得られると考えられています。
1日1個食べる習慣をつけるだけで健康・美容効果が見込めますので、ごはんのお供やお茶請けとして、毎日おいしくいただきましょう。
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