卵が高級食材・キャビアとして重宝されるチョウザメは、たんぱくな白身が魅力的な魚です。
今回は卵だけにとどまらない食材としてのチョウザメの魅力を、世界と日本での漁獲・養殖の状況、国内の養殖ブランド品の情報と一緒に紹介していきます。
チョウザメはサメじゃない?生態や特徴とは?
チョウザメは、チョウザメ科に分類される魚の一種です。一般的にイメージされる「サメ」とはまったく異なる生き物ですが、以下のような身体的特徴を持っていることから、チョウザメと名付けられました。
- 名前の由来となった、チョウザメの身体的特徴
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- 体全体を覆う、蝶のようなかたちの硬いウロコ
- 長い鼻と、体の下側を向いて口がついたサメに似た顔
- 大きいものでは体長が6m以上にもなる、サメに近いサイズ
- ヒレのかたち、つき方も含め、魚というよりサメに似た姿
長い鼻の下には4本のひげがあり、口の中には歯がありません。チョウザメはこのひげでエサとなる甲殻類、節足類を探し、捕食して暮らしています。
またサケのように川、湖、海と水質の異なる場所で生涯を過ごすのもチョウザメの特徴です。川の上流で卵から孵化したチョウザメは、ある程度成長したらメインの生息地となる湖や海へ移動し、繁殖期には生まれた川へ遡上して卵を産む半淡水魚になります。その寿命は非常に長く、推定年齢が70歳を超える個体も確認されているそうです。
チョウザメはキャビアもおいしいけど魚肉もおすすめ
キャビアとは、チョウザメから採れる魚卵の塩漬けのこと。より大粒で、色が灰色や緑色に近いものが上質とされ、粒の大きさにより3種類にランク付けされています。
キャビアのランク
- ベルーガ
- ベルーガチョウザメ(オオチョウザメ)の卵で、明るい灰色から暗めの灰色が特徴。きめ細やかな大粒キャビアで、最上級品
- オシェトラ
- ロシアチョウザメ、シップチョウザメの卵で少し褐色がかかった灰色。ベルーガよりは小粒の中級品のキャビア
- セヴルーガ
- ホシチョウザメの卵で淡い灰色の小粒のキャビア。3種類のキャビアのなかで最も下級品
フォアグラ、トリュフと並び世界三大珍味に数えられるキャビアは、種類によらず非常に高値で取引されます。このため、近年ではタラなど他の魚卵を黒く着色し、キャビアに似せて作られた比較的安価な代用品も見られるようになりました。
なおチョウザメは、卵だけでなく身も世界中で愛される高級食材です。中国では「煌魚」、ヨーロッパでは「ロイヤルフィッシュ」と呼ばれるチョウザメの身は、皇帝や王など時の為政者に食されてきました。
その歴史から、現在も世界でチョウザメは高級食材として広く愛され、地域によってはチョウザメ料理の有無が高級レストランの条件として定められていることもあるそうです。
体内に腎臓を持つチョウザメの身は、アンモニア臭のない非常に美しい白身。ぷりぷりとした食感と、ヒラメやフグに似たたんぱくな味わいが特徴で、近年では日本でもおいしい魚として知られ始めています。
チョウザメの栄養は?キャビアと魚肉で健康効果は違うの?
見た目と味の特徴がわかったら、ここからはチョウザメの栄養価を学んでいきましょう。
キャビアに含まれる栄養
チョウザメの卵であるキャビアに含まれる栄養素と期待できる栄養効果は以下の通りです。
- キャビアに含まれる栄養素
- ビタミンE・B2・B12などのビタミン類、パントテン酸、ナトリウムなどのミネラル類
- どの栄養も人間が生きていくうえで欠かせない栄養素
- 貧血や血栓、動脈硬化の予防や味覚を感知する味蕾(みらい)の形成、腰痛や肩こりを緩和する効果が期待できる
チョウザメの魚肉に含まれる栄養
チョウザメの魚肉に最も多く含まれている栄養は、良質なたんぱく質である以下複数種類のアミノ酸です。
チョウザメの身に含まれるアミノ酸の種類
- グルタミン酸
- 脳の機能を活性化する成分で、強いうまみのもととなる
- アスパラギン酸
- 栄養素の吸収、代謝、疲労の回復を促進する作用がある
- アラニン
- 肝臓のエネルギー源となる栄養素。肝臓の機能と健康維持に役立つ
- グリシン
- 血流の促進と、睡眠の質を高める作用があるアミノ酸
- バレニン
- 筋肉の耐久力や疲労の軽減、回復の促進に効果的なアミノ酸
- カルノシン
- β-アラノンとL-ヒスチジンが結合したアミノ酸。運動能力の向上、アンチエイジング、生活習慣病、認知症などへの予防と改善効果が期待できるアミノ酸
他にも、一般的にはサバなど青魚に多く含まれることで知られるDHAとEPAの高濃度不飽和脂肪酸なども多く含んでいます。また、皮の部分はコラーゲンも豊富なため、美容や老化防止にも役立ちます。
世界的に人気が高いチョウザメは日本でも養殖されている
卵、身ともに高値で取引されるチョウザメは乱獲も進んでおり、近年では世界的に絶滅の危機が心配される種となっています。そこで、天然資源を守る方法のひとつとして推進されてきたのがチョウザメの養殖です。
チョウザメの人気が高いロシア、中央アジア近辺の国々で盛んに行われてきたチョウザメの養殖ですが、近年では日本でも行われるようになってきました。1983年、旧ソ連からの技術提供を受けて宮崎県で日本初のチョウザメ養殖がスタートし、その後は沿岸部だけでなく、コイやマスなど淡水魚の養殖を行ってきた内陸部・山間部へもチョウザメ要衝の技術が広まっていったといわれています。
現在では岡山県、岐阜県、宮城県、北海道など全国各地にチョウザメの養殖場があり、異業種から参入するケースも少なくありません。食材としてのニーズが世界中にあり、高値で取引されるチョウザメは、収益性が高いため非常に養殖向きの魚といえるでしょう。
また、同じ種類であっても質の高いものほど高値で取引できるところもチョウザメの魅力です。収益性と、他者よりも質の高いものを作ろうとする日本人の職人気質がマッチし、日本でのチョウザメ養殖は近年活発化してきています。
養殖チョウザメのローカルブランド|宮城県・長野県・茨城県を紹介
最後に、日本国内でブランド化されている養殖チョウザメを宮崎県、長野県、茨城県から計3種類紹介します。いずれも、一部地域の飲食店または通販で取り寄せれば実際に食べられますので、ぜひ食べてみてくださいね。
宮崎チョウザメ(宮崎県産シロチョウザメ)|宮崎県
- チョウザメのなかでも、特に魚肉が美味とされる種類のブランド養殖チョウザメ
- 独自に開発した飼料で育成し、こだわりの方法で活〆された身はフグのような食感とクセのない上品な味わいで、どんな料理にもマッチする
- 宮崎県の他、福岡県、関東地方の一部飲食店で食べることができる
古代黒耀蝶鮫(こだいこくようちょうざめ)|長野県
- 日本屈指の名水とされる、信州は長和町の黒耀の水で育てられたブランド養殖チョウザメ
- 近隣の佐久穂町で育てられた信州サーモンの身と併せて紅白の押し寿司に加工され、冷凍食品として販売されている。通販で購入可能
つくばスタージョン|茨城県
- 富士山と並び称される名峰・筑波山の伏流水で育てた、ブランド養殖チョウザメ
- 「スタージョン」とは英語でチョウザメを意味し、冷蔵品や缶詰に加工して販売している
- 製造元である有限会社つくばチョウザメ産業の他、近隣の道の駅で購入できる
おわりに:日本でもチョウザメ養殖は盛ん!おいしい卵と身を食べてみよう
高級食材であるキャビアが採れる魚として知られるチョウザメは、日本ではあまりなじみのない魚でした。しかし、世界的には卵とともに身もおいしく、高級な食材として知られ、珍重されてきた歴史があります。そして近年、天然資源の減少と食材としての高いニーズを受けて進められてきたチョウザメの養殖は、日本でも盛んになりつつあるのです。飲食店や通販を利用し、日本産のブランド養殖チョウザメの卵と身をぜひ食べてみましょう。
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