本州最北端の県として知られる青森県では、温泉と自然、郷土文化の体験などさまざまなパターンの観光も楽しめます。そこで今回は、青森県各所から温泉入浴と観光を一緒に楽しめるおすすめの宿を5つ紹介。各宿、その場所で楽しめる観光の特徴も一緒に解説していきます。
青森市 酸ヶ湯温泉 八甲田ホテル:冬スキーや登山名所!温泉浴と森林浴を味わおう
まずは青森市から「酸ヶ湯温泉 八甲田ホテル」を紹介します。酸ヶ湯温泉は1684年、現在の青森市内に住む猟師が仕留め損ねた鹿を追っているなかで見つけた温泉である、と伝えられています。
手負いの鹿を追って3日目、やっと鹿を見つけた猟師は再び仕留めようとしますが、ケガをしているはずの鹿に逃げ去られてしまいました。ケガをしているはずなのに、非常に俊敏に逃げていった鹿に違和感を持った猟師は付近を探索し、湯が湧いているのを発見します。
この湯に薬効があることがわかり、「鹿の湯」と名付けられたものが、現在の酸ヶ湯です。
江戸時代には、温泉のわき出す場所の近くに小屋を建てて、湯治客や山菜採り、猟師に解放し利用していたといいます。やがて各小屋を運営・開放していた小屋主が協力し、組合を設立。浴場のある湯治棟の他に旅館を増築し、現在の酸ヶ湯が形成されていきました。
そして昭和29年、その豊富な温泉湧出量と収容施設の広大さ、アクセスや周辺の環境の良さなどが評価され、酸ヶ湯は日本国民保養温泉地第一号に指定を受けます。
以来、酸ヶ湯は全国に多数存在する温泉のモデルケースとなり、高い知名度を誇る温泉地のひとつとして愛されているのです。
そんな酸ヶ湯温泉の一角にある八甲田ホテルは、静かな森に建つ洋風ログ木造建築のリゾートホテル。木がふんだんに使われ、温かみが感じられるエントランスを通り、客室や大浴場から周辺のブナの森を眺めれば、八甲田の自然の豊かさを体感できるでしょう。
なお大浴場では窓からの景色だけでなく、香りでも青森の自然の豊かさを感じられます。浴場の木材には、青森県の名産品であるヒバを使用。ヒバと温泉の香りの中、季節によって色と姿を変えるブナの森を眺めて入浴する。八甲田ホテルでは、そんな非日常的で贅沢な入浴体験ができます。
なお、大浴場で楽しめるお湯は自家源泉かけ流し、以下の泉質・効能の天然温泉です。
泉質・効能
- 泉質
- 酸性、含鉄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉
- 効能
- 神経痛、筋肉痛、関節痛、疲労回復、冷え、五十肩、打ち身、慢性消化器病、痔、運動麻痺、関節のこわばり、くじき、病後回復期、健康増進
温泉による効能と、五感で感じる青森・八甲田の豊かな自然で、じっくり癒されてください。
ホテル周辺の観光地
八甲田ホテル周辺の観光地としては、酸ヶ湯温泉の東側に隣接する八甲田山が挙げられるでしょう。八甲田山は、ブナやアオモリトドマツなど複数種類の高山植物、イワツバメなどを見られるすばらしい自然観光地です。八甲田大岳、井戸岳、赤倉岳、北八甲岳など周辺の山々では春には美しい花が、秋には色鮮やかな紅葉が望めます。
酸ヶ湯は温泉街であると同時に、これらの山々の登山口でもあります。酸ヶ湯温泉を訪れるなら、八甲田山の景観やハイキング、山岳スキーなど自然を活用したアクティビティを堪能してくださいね。
十和田市 蔦温泉旅館:「千年の秘湯」は十和田湖散策とセットで楽しんで
十和田市から紹介するのは「蔦温泉旅館」です。十和田、八幡国立公園の中部、ブナの森の中に建つ温泉宿である蔦温泉旅館は源泉沸き流しを最大の特徴としています。
平安時代に開かれた源泉の上に浴場を建て、浴槽の下から温泉がわき上がってくる温泉を、以下の浴場でそれぞれ楽しめます。
蔦温泉旅館、お風呂の種類・概要
- 久安の湯
- かつては旅館等専用の混浴風呂だった浴場
- 1990年に改築したものの、現在もかつての風情をのこし浴槽が1つしかないため、時間帯による男女入れ替え制をとっている
- 泉響の湯
- かつての湯治棟専用混浴風呂を1996年に改装し、男女別に分けた浴場
- 久安の湯よりも広々とした造りで、天井までの高さは最大12メートルある
- お湯が湧き出て、流れる音が反響して独特な解放感を味わえるようになっている
※大浴場以外に貸し切り風呂もあり。別途料金が必要だが、当日予約で利用可能。
浴槽の床から湧き上がる温泉に浸かるというのは、1,000年近い歴史を持つ蔦温泉旅館ならではの入浴体験でしょう。2つの大浴場と貸し切り風呂は、いずれも日帰りでの入浴が可能です。料金と利用可能時間については、以下を確認してください。
- 蔦温泉旅館の日帰り入浴について
- 料金は大人800円、小学生以下は500円、貸し切り風呂は1時間3,300円
- 利用可能時間は午前10~午後4時まで
泉質・効能
無色透明で無臭の蔦温泉旅館の源泉の泉質・効能はそれぞれ以下の通りです。
- 泉質
- ナトリウム、カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉
- 効能
- 神経痛、リウマチ、機能障害
旅館周辺の観光地
温泉入浴の前後には、周辺森林の散策や特別名勝および天然記念物に指定されている十和田湖周辺での観光を楽しむのがおすすめです。
- 十和田湖とは
- 火山活動によって形成された、二重カルデラ湖
- 青森県十和田市と秋田県小坂町にまたがり、その面積はおよそ60平方㎞にもなる
- 湖の周囲はおよそ64㎞、水深は最も深いところでおよそ327mと日本でも3番目に深い
新緑を楽しめる初夏から夏、紅葉を見られる秋にかけてがハイシーズンとなる十和田湖は、湖周辺に観光スポットが密集しています。遊覧船も運行しているため、車がなくても十分に周辺の景観と観光を楽しめるでしょう。
蔦温泉旅館を利用するなら、徒歩と遊覧船でゆっくり十和田湖周辺を巡り、観光を楽しんでくださいね。
弘前市 嶽温泉 山のホテル:岩木山ふもとの温泉宿で味わうマタギ飯!山の恵みに舌鼓
弘前市から紹介するのは「嶽(だけ)温泉 山のホテル」。霊峰として崇められ、かつてマタギと呼ばれる人々が暮らした岩木山南麓の温泉地にあるホテルです。山を愛し、崇め、共に生きた猟師であるマタギの生きざまや心を感じられる素朴な風情の宿で、湯小屋と呼ばれる浴場では青みがかった乳白色のお湯を楽しめます。
泉質・効能
320年前に開かれたと伝わる嶽温泉の泉質・効能は、以下の通りです。
- 泉質
- 酸性-カルシウム-硫黄泉
- 効能
- 浴用では擦り傷、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、冷え、慢性婦人病
- 飲用では慢性昇格病、慢性便秘
青森ヒバをふんだんに使った浴場では、ヒバの香りと温泉の硫黄臭を感じられます。窓の向こうに季節によって色を変える木々の様子を眺めながら、こぢんまりとした浴場で贅沢に、古くから湯治場として愛された柔らかなお湯を楽しんでください。
また、クマや鹿、猪などジビエ肉を使ったマタギ飯や、津軽名産のりんごを使ったデザートなど山の幸たっぷりの食事をいただけるのも山のホテルの魅力です。この地域に伝わるマタギ文化を、温泉と料理の両方から、五感で存分に味わえますよ。
黒石市 ランプの宿 青荷温泉:電気や携帯電波もない!秘湯温泉で過ごすスペシャルな時間
青森県のほぼ中央、黒石市からは秘境と名高い「ランプの宿 青荷温泉」を紹介します。青荷温泉は最寄りのJR弘前駅から車で1時間、対向車とぎりぎりすれ違えるほど細い道を進んだ標高400m地点にある温泉宿です。
十和田湖と八甲田山に挟まれた電気や電波が届かないエリアにあるため、滞在中はテレビを見ることもスマホを使うこともできません。夜になって館内に灯るのは、ランプの明かりだけ。この不便さが秘境感、旅情を掻き立てるとして、青荷旅館の人気を支えているのです。
青荷温泉、お風呂の種類・概要
青荷温泉の入浴施設は、本館内湯、露天風呂、健六の湯、滝見の湯の4種類があります。
- 本館内湯
- 2014年9月に新装オープンした本館併設の浴場
- 総ヒバづくりで大きな窓がついた、開放的で香りの良いお風呂
- 露天風呂
- 大石に囲まれた、渓流沿いの岩露天風呂
- 昼までもランプの明かりが灯り、風情たっぷり
- 健六の湯
- 総ヒバづくりが自慢の、温かい雰囲気の内湯。本館とは別の建物
- 滝見の湯
- 2005年10月に新しくオープンした浴場。本館や健六の湯とは別棟
泉質・効能
入浴できるお湯の泉質・効能は、以下の通りです。
- 泉質
- 単純温泉
- 効能
神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔、冷え、病後回復期、疲労回復、健康増進
青荷温泉、周辺のおすすめ観光地
周辺の観光スポットとしては、黒石市の自然と歴史を感じられる以下3つがおすすめです。
- 中野もみじ山
- 県内外に知られる、紅葉の名所
- 紅葉の期間には、夕方からライトアップとムービングライト、LEDライトによる光のファンタジーショーが開催される
- 特設の座席で紅葉とライトアップ、ショーを堪能できる故嵐山弁当企画もおすすめ
- 黒石観光りんご園
- 青森県の名産品、りんご狩りを楽しめる観光客に人気の農園
- 9~11月にかけてつがる、ふじ、王林、ジョナゴールドなど、複数のりんごの収穫と購入、そして津軽平野と岩木さんの景色を楽しめる
- 中町こみせ通り
- 日本の道百選、国の重要的伝統建造物群保存地区に選定された木造のアーケード通路
- 藩政時代からほぼそのままのかたちで残る、全国的に見ても非常に珍しいかつての商店街で、ボランティアガイドの説明を受けながら見学できる
三沢市 星野リゾート 青森屋:ぽかぽか温泉と青森ねぶた祭のしつらえで心も体も温かに
一般的にイメージされる青森らしさを存分に味わいたい人には、三沢市にある「星野リゾート 青森屋」がおすすめです。
青森屋は、青森の原風景をイメージして作られた宿泊施設。古民家の並ぶ小径には馬車が巡回し、館内の随所には青森県の伝統工芸品や、日本三大祭りに数えられるねぶた祭の装飾が配されていて、青森らしい情緒を感じられます。
敷地内には露天風呂、足湯、元湯と複数の入浴施設を完備しています。青森屋の温泉は、皮脂を除去し肌の水分量を調整するナトリウムイオン、コラーゲンの生成を助けるメタケイ酸などが多く含まれるアルカリ性単純温泉。肌の状態を整えアンチエイジング効果も見込める美肌の湯と呼ばれています。館内の各入浴施設で、異なる趣や青森名産のヒバの香りのなか、美と健康のための湯浴みを楽しみましょう。
青森らしさを表現することへのこだわりは、客室にも現れています。玄関の壁や天井に立体的なねぶた絵がある部屋、伝統工芸品である南部裂織や八戸焼などが配された部屋でくつろげば、青森の郷土や伝統を肌で感じられます。
ヒバづくりの浴槽で半露天風呂を楽しめる、専用風呂付きの客室もありますので、あなたの思うかたちで青森らしさを満喫しましょう。
おわりに:自然から伝統、郷土文化まで青森は魅力いっぱい!温泉と一緒に楽しもう
一般的にはねぶた祭、りんごのイメージが強い青森県ですが、この他にも八甲田山など自然が作り出す美しい景観やアクティビティ、伝統工芸品など観光地としての魅力はたくさんあります。また、地域により楽しめる景色や文化、温泉の泉質も異なるため、温泉旅行で入浴と周辺観光をするだけでも、その土地ならではの文化・歴史に触れられるはずです。ぜひ本記事を参考に、青森県の温泉地と周辺観光地を訪れてみましょう。
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