滋養強壮に効く食べ物として、広く認知されている牡蠣。その栄養価や味わいを活かすには、どのように食べるのが正解なのでしょうか。
今回は牡蠣の栄養価について、種類や産地による特徴や違い、牡蠣に含まれている栄養成分とこれらを活かせる食べ合わせと一緒に紹介します。旅先のグルメやお取り寄せを楽しむときの参考にしてください。
牡蠣は種類や産地で特徴に違いはあるの?
牡蠣の種類は、まず生物学的に区別される「岩牡蠣」と「真牡蠣」に分けられます。
- 岩牡蠣の特徴
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- 旬は水揚げ期間の6~9月、初夏から夏にかけての約3か月
- 産卵期には、数か月の長い時間をかけて産卵する
- 成長にも時間がかかるため、殻も身も大きく肉厚でボリューミー
- 繊細でジューシーな味わいで、夏の間も安定した品質で出荷可能
- 天然ものと養殖ものの2通りがある
- 真牡蠣の特徴
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- 旬は水揚げ時期の10~4月、秋から次の春にかけての約半年
- 産卵期には、特定の数か月の間に一気に、大量に卵を放出して産卵する
- 産卵後は身の栄養が落ちるため、食品としての品質は下がってしまう
- このため、産卵期を迎える前の冬の時期が最も味が良いとされる
- 比較的小ぶりだが、クリーミーな味わいが楽しめる
- 1~3年かけて育てる養殖物がメインで、天然ものはほとんどない
次に、日本各地の牡蠣の名産地による味わい・特徴の違いについて、見ていきましょう。
- 広島の牡蠣
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- 室町時代から牡蠣の養殖をしている地域で、生食・加熱用牡蠣の養殖量を合計すると全国一位
- 扱うのは岩牡蠣で、プリッとした大粒な肉と、磯の香りがするコクのある味わい
- 1~2月に最旬を迎えるが、技術進歩により近年では年間を通して楽しめるようになった
- 宮城の牡蠣
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- 生食用だけなら、全国一位の生産量を誇る
- 寒流・暖流・黒潮がぶつかる漁場で、クリーミーで濃厚な真牡蠣を養殖している
- 旬は11~4月、または3~5月
- 岩手県大船渡赤崎の牡蠣
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- この地域で、耳釣り養殖と呼ばれる養殖方法で育てられる真牡蠣
- 温湯処理をしたうえで3年かけてじっくり牡蠣を育て、幻とも言われる芳醇な味わいに仕上げている
- 兵庫県相生の牡蠣
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- 瀬戸内海の播磨灘で養殖される真牡蠣
- 播磨地方の川から海へ流れ込むプランクトンを栄養に、プリッとした肉感でこってりした味わいになる
- 長崎県九十九島の牡蠣
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- リアス式海岸の海へ山からそそぐ豊富なミネラル分、夏と冬の水温差を活かし、この地域で養殖される真牡蠣
- 引き締まった身と、さっぱりしながらもコクのある味わいが特徴
- 福岡の恵比寿かき
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- 福岡の博多湾は唐泊で養殖される牡蠣の総称
- 冬は真牡蠣、春先以降には岩ガキを養殖している
- 全体として身が引き締まり、プリッとした食感の牡蠣が獲れる
牡蠣にはどんな栄養が含まれているの?
牡蠣に含まれる栄養成分のうち、他の食材に比べて特に含有量が多いのは亜鉛、ビタミンB12、鉄、グリコーゲン、タウリンの5種類です。
以下に、これら牡蠣の栄養成分の働きと、期待できる健康効果を解説していきます。
牡蠣に含まれる「亜鉛」の健康効果
私たちの体の健康維持に欠かせない、必須ミネラルの一種。人間の体内では生成できない栄養成分で、以下の健康効果が期待できます。
- 皮膚や粘膜、髪の細胞が生まれ変わるのを助けて、正常な状態に保つ
- 皮膚と粘膜の状態が整うことで、免疫力が高まり感染症にかかりにくくなる
- 味を感知する味蕾(みらい)細胞の生まれ変わりを助けて、味覚を正常に保つ
- 銅や鉄など、血液や神経に必要な栄養の吸収を助け、貧血やうつ状態を予防する
- 精子の形成を助け、男性の生殖機能を維持・改善する
- 妊娠中の女性が食べると、胎児の発育不全を防いでくれる
女性なら1日4個、男性なら1日5個の牡蠣を食べれば、1日に必要な亜鉛摂取量を補うことができますよ。
牡蠣に含まれる「ビタミンB12」「鉄」の健康効果
ビタミンB12は血液や神経細胞を健康に保ち、貧血を予防する作用を持っています。また鉄は、血流にのって酸素や栄養を運ぶヘモグロビンの材料となる栄養成分です。
このため、牡蠣を食べることで貧血予防や疲労回復、血流促進による体力増強が見込めます。
牡蠣に含まれる「グリコーゲン」の健康効果
炭水化物に分類されるグリコーゲンも、牡蠣に豊富に含まれる栄養成分のひとつです。
私たちの体・脳を動かすエネルギーとなる炭水化物のうち、グリコーゲンは、特にエネルギーとして使われるスピードが早いことで知られています。
また、グリコーゲンには血糖値を下げるインスリンの分泌を促す作用も確認されています。
このため、牡蠣には疲労回復や血糖値上昇、糖尿病予防の効果が期待できるというわけです。
牡蠣に含まれる「タウリン」の健康効果
体内で作ることのできる、アミノ酸の一種です。
筋肉を収縮されるのに使われる栄養成分で、血圧の正常化、血中コレステロール値の減少、肝機能を向上させる作用が期待できます。
このため、牡蠣を食べることで高血圧予防や高脂血症、またこれら生活習慣病が原因で起こる動脈硬化、肝機能障害の予防効果が得られると考えられます。
牡蠣の栄養を効率よく摂取するポイントは?
最後に、牡蠣の栄養を効率よく摂取するための食べ方・食べ合わせのポイントを紹介していきます。
タウリンを摂取するなら、生で食べよう
牡蠣に豊富に含まれるタウリンの弱点は、熱に弱いこと。せっかく牡蠣を食べても、加熱してしまうとタウリンが損なわれてしまいます。
タウリンによる健康効果を狙って牡蠣を食べるなら、生で食べるようにしましょう。
加熱するなら、エキスごと摂るよう心がけて
ビタミンB12など、牡蠣には加熱すると水に溶けだす栄養成分も含まれています。
栄養成分を余すところなく摂取できるよう、出汁ごと楽しめる雑炊やスープ、鍋などの汁物にするのがおすすめです。
健康効果別、牡蠣と相性の良い食材
牡蠣の栄養を活かし、健康効果を狙うことのできる食材の組み合わせは、以下の通りです。
- 貧血を予防・改善したい
- レモン、ほうれん草、ハマグリ、シジミ
- 疲労回復を促進し、元気になりたい
- イカ、エビ、カニ、タコ、鶏肉、酢、もやし、納豆、トマト、ほうれん草
- 老化を防止し、肌をきれいにしたい
- トマト、レモン、パプリカ、ブロッコリー、酢、鶏肉、納豆、もやし
- 生活習慣病を予防したい
- ブロッコリー、パプリカ、トマト、ニンジン、チンゲン菜
おわりに:栄養成分と効果的な食べ合わせを知って、牡蠣を健康に役立てよう
牡蠣は大きく岩牡蠣と真牡蠣に分けられ、さらに産地によっても味わいに違いが見られます。ただ、含有栄養成分の量・質に種類や産地による違いはほとんどありません。このため、牡蠣の健康効果と栄養的に相性の良い食材を一通り知っておけば、どの種類の牡蠣でも応用できます。牡蠣を食べるときは、ぜひ本記事を参考に食べ方を工夫してくださいね。
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