鍋物や唐揚げ、薄造りにして食べられることの多い冬の味覚であるフグ。歴史上では食用が禁じられていたこともある魚ですが、ぷりっとした白身がおいしいと人気が高く、近年では養殖も盛んに行われています。
今回は養殖フグについて、天然ものとの価格や毒性の違い、各地から通販で購入できるおすすめのブランドフグまで、まとめて紹介していきます。
フグってどんな魚?トラフグなど種類を紹介
フグは日本でおよそ50種類、海外まで含めると100種類ほど生息するフグ目の魚です。カワハギ、マンボウなどもフグの仲間ですが、日本で食用として扱われているフグは高級魚として知られるトラフグをはじめ、わずか22種類のみです。
日本で流通する、代表的な5種類のフグの特徴
比較的市場で見ることの多い5種類のフグについて、それぞれ特徴を紹介します。
トラフグ
- 「シロ」「テツ」「本フグ」とも呼ばれ、全長80㎝ほどある最高級の種類
- 胸ヒレ近くの白い縁取り付きの黒い斑点があること、白色または赤みがかった尻ヒレ、背面と腹に密生するトゲが特徴的
- 身、皮、白子が食用とされ、日本でフグと言えば最初にイメージされる食用フグの代表格
- 室蘭以南の日本海西部、黄海、東シナ海などに生息する天然ものは12~2月にかけて旬を迎えるが、人気の種類であるため養殖も盛んである
マフグ
- 「なめらフグ」「新潟フグ」「北海道フグ」などと呼ばれることもある種類
- 背は暗褐色で小さな斑点がたくさんあるがトゲはなく、皮が滑らかなのが特徴
- 体長はおよそ50㎝前後と小さめ、トラフグと同じく室蘭以南の日本海西部、黄海、東シナ海などに生息していて漁獲高も多い
- 身と白子が食用とされる
カラスフグ
- 最もトラフグに似た種類
- 全長50㎝とやや小さいこと、胸ヒレ横に小さな斑点がないこと、尻ヒレが黒色または暗色であるかどうかでトラフグと区別される
- 主に東シナ海、黄海に生息しており身、皮、白子が食用可能
- トラフグより味が劣り安価であることから代用品としての乱獲が進み、2014年11月には絶滅危険種リストに指定されている
シマフグ
- 背から体の中心にかけて黒地に白色の横じまが走り、すべてのヒレが黄色い種類
- 体長はおよそ60㎝とやや大型で、相模湾以南、黄海、東シナ海に生息している。特に冬から春にかけて、比較的安価で流通するのが特徴
- 身、皮、白子を食用可能で、旬の時期には鍋や唐揚げなどさまざまな調理法で楽しめる
サバフグ
- サバのように群れで行動する、体長30~40㎝の種類の総称
- 体表に光沢があるのが特徴で、下関や九州で「カナト」と呼ばれるシロサバフグの他、クロサバフグやカナフグなどがこれに含まれる
- 身、皮、白子が食用可能だがうま味が少ないため、一夜干しなど加工品になることが多い
養殖フグと天然フグは価格がどのくらい違う?
養殖フグと天然フグの最大の違いは、火を通したときの身の食感に現れるといわれています。大海原を自由に泳いできた天然フグの身はよく締まっていて、生で食べると「コリっとした食感」に、火を通すと養殖ものとは明らかに異なる「ぷりぷり食感」が楽しめるそうです。
対して、養殖フグは天然ものに比べると身が柔らかいです。天然ものと比較すると弾力では劣りますが、柔らかな養殖フグの身の方が食べやすく、好みだと言う人もいるので、いちがいに甲乙はつけられません。
ただ、「弾力のあるフグは、噛んでいくほどフグ特有の濃いうま味を味わえる」といわれていることもあり、より弾力があり味の濃い天然フグは、養殖フグよりも高値で取引されます。時期や大きさ、品質によって違いはありますが、養殖フグより5~6倍高い価格が付けられるケースも少なくありません。
養殖フグに毒性はあるの?肝臓は食べてはいけない!
フグ毒は「テトロドトキシン」と呼ばれるもので、青酸カリの500~1,000倍もの強い毒性があります。
毒が含まれる部位や毒の量は、フグの種類によって異なりますが、ほとんどのフグの場合、肝臓や卵巣などの内臓、または皮に高濃度のテトロドトキシンが含まれているため、これを適切に除去できなければ死亡事故の原因ともなります。
実際、日本では毎年30件ほどのフグ毒の事故が発生していますし、何年かに1回は死者の出る年もあります。
不幸な事故を防ぐため、フグの調理・有毒部位の切除には免許が必要となり、各都道府県が定める免許を取得した人しかフグを捌き、調理し、販売・提供することができなくなっています。
なお、フグに高濃度のテトロドトキシンが含まれているのは、フグが食べる貝などのエサに含まれた毒を排出せず、体内に蓄積させ続けるためです。生け簀で暮らし、人間から与えられる人工飼料を食べて育つ陸上養殖のフグに限っては、ほとんど毒性がありません。ただ、毒性がほとんどない養殖フグであっても、特に毒が蓄積されやすい肝臓を販売・提供することは禁止されています。
天然、養殖に限らず、フグの肝臓を購入・食用することはできないことは理解しておきましょう。
- 厚生労働省による、フグの食用についての取り決め
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- フグのうち食べて良いのは、昭和58年12月2日に出た厚生労働省の通知「フグの衛星確保について(局長通知)」において定められた種類、部位のみ
- 具体的には塩蔵品以外の卵巣、肝臓の販売・提供は禁止
養殖トラフグのおすすめ通販:熊本・大分・長崎・神戸
最後に、通販で購入できるおすすめの養殖トラフグを熊本県、大分県、長崎県、兵庫県より紹介していきます。
熊本県|天草とらふぐ
- トラフグを県の魚とする熊本県の養殖事業者が、ミネラル豊富な天草の海水で育てるフグ
- 温暖な気候のなか産卵するトラフグの稚魚を捉え、マルハニチロが開発した栄養バランスの良い飼料と自社で製造するオリジナルの飼料を与えて陸上養殖したもの
- 徹底的に健康管理されたフグをてっさ、てっちり、皮の湯引き、ヒレ酒ようの焼きヒレなどがセットになったさまざまな商品に加工し、通販で販売している
大分県|豊後極みふぐ
- トラフグの養殖に40年以上携わるエイコー水産が、自然に近い環境で丁寧に陸上養殖したフグ。自社で養殖生産から加工、販売まで一貫して行っている
- 生産・加工した身欠き、刺身用セット、ちり鍋用、唐揚げ用の豊後極みフグはエイコー水産のサイトから購入可能
長崎県|戸石とらふぐ
- 八郎川から流入する淡水、海水が交じり合う橘湾で海面養殖されて育つフグ
- 天然ものに負けないおいしさをめざし作られているブランドフグで、周辺の養殖事業者全員で毎年「魚の健康診断」「評価会」を行いながら育て、下関や東京にも多く出荷している
- ちり鍋セット、お刺身セット、ちり鍋とお刺身用の身が一緒になったセットなど、複数の商品が通販で購入できる
兵庫県|淡路島3年とらふぐ
- 兵庫県は淡路島、南あわじ市福良湾の養殖場で3年かけて育てるブランドフグ
- 通常、養殖フグは2年ほどで出荷されるが、淡路島3年とらふぐは3年かけて一般に流通する養殖トラフグのおよそ2倍にまで育て上げてから出荷する
- 水温が低く、流れの早い鳴門海峡近くで養殖するため、身の締まりと味の濃さが特徴
- 養殖から加工までを行う若男水産のサイトにて、鍋・白子コースととらふぐ刺身などが購入可能
おわりに:養殖フグは天然フグに比べ安価で、毒の危険が少ない!
フグには通常、テトロドトキシンという猛毒が含まれていますが、生育環境とエサを管理されている養殖フグにはほとんど毒性がありません。天然ものに比べ食感や味の濃さ、香りでは劣るとされていますが、比較的安価でおいしく、安全に食べられる点が養殖フグの魅力と言えるでしょう。通販で取り寄せればお店に行くよりも安く、おいしいフグが食べられますから、ぜひ各地のブランド養殖フグを購入してみてくださいね。
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