ウインタースポーツができる自然豊かな場所、さくらんぼなど農産物のイメージが強い山形県ですが、温泉地も複数あります。
今回は、温泉や宿の設え、グルメや有名ドラマとゆかりがあるなど、特徴ある山形県内の温泉宿を厳選して5か所紹介します。
蔵王温泉 おおみや旅館:100%源泉掛け流し&全館畳敷き宿で和の心を味わう
蔵王温泉はいまからおよそ1,900年前、ヤマトタケルに従軍していた吉備多賀良が発見したと伝わる、歴史ある温泉です。江戸時代には蔵王権現への西側登山口としてにぎわい、大正時代には周辺施設・道路の整備が、昭和に入るとスキー場も開業し、日本有数のマウンテンリゾートとなっています。
肌表面の殺菌や、全身の血行促進による美容・健康効果が見込めるという蔵王温泉の泉質・効能は、以下の通りです。
泉質・効能
- 泉質
- 強酸性の硫黄泉
- 効能
- 切り傷、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、神経症、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、冷え、病後回復期、疲労回復、健康増進
おおみや旅館では、硫黄の香り漂うなか蔵王温泉のお湯を、100%源泉かけ流しでゆったりと堪能できます。徒歩5分以内には「上湯」「下湯」「川原湯」という公衆浴場もあるので、おおみや旅館内のお風呂とあわせて、湯めぐりするのがおすすめです。
なお、おおみや旅館の魅力は、お風呂だけではありません。創業1,000年以上とも言われる旅館の館内は、全体を通して大正ロマンを感じられる、和風モダンなデザインになっています。
お部屋はもちろん、廊下や階段に至るまで敷かれた畳、随所に展示された大小時代に活躍した画家・竹久夢二の絵や数寄屋造りの建物が、ノスタルジックな風情を醸し出します。現代の慌ただしさから隔絶された、どこか懐かしい館内に身を置けば、ゆったりとした気持ちで過ごすことができるでしょう。
また山形牛、米の娘豚など、山形県愛でとれる山の幸とブランド食材をメインに、地産地消にこだわって作るお料理もおおみや旅館の大きな魅力。蔵王温泉のお湯と一緒に、歴史ある旅館と地元の味覚を、五感すべてで堪能してください。
由良温泉 本間義一:海水浴と源泉掛け流し温泉で気分爽快!ベテラン女将の漁師飯も絶品
続いて紹介するのは、庄内地方は由良海岸にある温泉宿「本間義一」です。由良海岸は日本の渚100選、快水浴場100選にも選ばれるほど美しい海岸で、白山島と島へかかる朱塗りの橋を望む海岸からの景色は絶景として知られています。
本間義一はそんな由良海岸にあって、由良漁港でとれる魚を使った本場の漁師めしと、源泉かけ流しの温泉を楽しめることを強みとするアットホームな宿です。漁師めしは、庄内浜が培ってきた食文化そのものと言っても過言ではありません。
本間義一の料理は館主がその季節、その日に漁港にあがったものから新鮮な魚介を選び、60年もの間漁師めしを作ってきた大女将直伝のレシピで調理したもの。食事を通し、地元の人々が作り上げてきた文化をおいしく学べるのは、この地で漁師めしを提供してきた本間義一ならではの経験です。
そして清掃を行う朝9時からの30分間を除き、常に由良温泉の源泉を張っているお風呂では、宿泊客はチェックアウト後を含め滞在中に何度でも入浴することができます。また、由良海岸での海水浴や釣り、60分ほどで一周できる白山島への散歩が気兼ねなくできるようにと、9~15時までの宴会場での荷物預かりサービスも実施しています。
本間義一から、由良海岸の海水浴場までは徒歩でおよそ3分。この距離なら、小さい子どもを連れていても海水浴と温泉、料理まで滞在中に目いっぱい庄内の魅力を堪能できますね。
その他、海水浴シーズンにはBBQセットや花火、浴衣の手配やレンタルサービスなども提供しているので、あなたの都合にあわせ滞在中の過ごし方は自由に変えられますよ。
銀山温泉 仙峡の宿 銀山荘:夜景も綺麗な歴史ある湯治街はロケ地としても有名
銀山温泉は、その名の通り江戸時代に大銀山として栄えた延沢銀山周辺に銀山で働く工夫が発見し、発展した温泉地です。銀山が閉山した1689年以降は、奥州街道から10㎞以上離れた山間部にあるにもかかわらず、湯治場としてにぎわったと言います。
しかし1913年、銀山側が大洪水を起こしたことで一帯の温泉街は壊滅状態となります。その後、昭和に入った1926年、源泉ボーリングを行った際に高温で多量のお湯が沸きだしたことから温泉街が復活し、現在ものこる3~4階建ての建物を作りました。この時の建物が、現在も銀山温泉のレトロな町並みとしてのこっているのです。
1986年、銀山温泉街は美しい町並みを守るために「銀山温泉家並保存条例」を制定。その後、NHK制作の国民的ドラマ「おしん」の撮影地となったことで全国的に知名度を高め、大正ロマンを感じるレトロな温泉街として観光客を喜ばせています。
そんな温泉街にある銀山荘の館内は純和風で、いずれの客室にも大きく窓がとられているのが特徴です。客室に入ると、目には窓から銀山川と周囲の木々が織りなす季節ごとの絶景が、そして耳には銀山川のせせらぎが届き、くつろぎの時間を提供してくれます。
湯野浜温泉 亀や:日本海の海景色を眺める温泉と山形高級食材を堪能
庄内平野の西部にあり、かつては亀の湯と呼ばれていた日本海沿岸の湯野浜温泉の「亀や」。湯野浜温泉は1053~58年の天喜年間、浜で温浴し傷を癒していた亀を見た漁夫が広めた、という伝えられる温泉地です。
「亀や」の宿名もこの伝説に由来したもので、以下泉質・効能の温泉を源泉かけ流しで提供しています。
泉質・効能
- 泉質
- ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉
- 効能
- 入浴すると身体がしっかり温まり、湯冷めしにくい他、亀やのお湯は飲泉も可能
- 浴用の場合は筋肉や関節の痛み、こわばり、冷え、末梢循環障害、胃腸機能の低下、軽度の高血圧症・糖尿病・高コレステロール血症、軽度の呼吸器障害、痔、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状、病後回復期、疲労回復、切り傷、皮膚乾燥症など
- 飲用の場合は萎縮性胃炎、便秘など消化器の不調へ効能あり
亀のや館内の入浴施設としては、男性用・女性用専用の浴場がそれぞれ備えられています。
お風呂の種類・概要
- 男性専用のお風呂
- 大浴場、檜風呂、露天風呂、サウナを併設した「亀の湯」
- 女性専用のお風呂
- 大浴場とサウナを備えた「天女の湯」、檜風呂と露天風呂を備えた「羽衣の湯」
さらに「HOURAI」と名付けられた最上階フロアの客室には、それぞれ趣の異なる客室付きの専用風呂も完備。いずれのお風呂も、海の絶景を見渡す眺望の良さが自慢です。他の人に邪魔されず、入浴と部屋での時間をゆっくり満喫したいなら、HOURAI客室を利用すると良いでしょう。
また、季節に応じた庄内の旬食材を味わえる食事も亀やの魅力。その年の気候や、仕入れ状況によっても変わりますが、四季折々に以下のような食材をいただけますよ。
亀やでいただける、季節ごとの旬食材
- 春
- 桜鯛、たけのこ
- 夏
- あいなめ、そい、岩牡蠣、するめいか、だだちゃ豆
- 秋
- 秋鮭、くちぼそかれい、真鯛
- 冬
- はたはた、蟹、寒鱈、藤沢蕪
なお魚よりも肉派、たくさん肉が食べたいという人向けに、山形県産の山形牛と米沢牛のみを提供する食事処も備えています。ここでは、一皿一皿すべてに牛肉が使われたコース料理を提供。肉好きも大満足できる食事処があるのは、海辺の温泉宿にはめずらしい特徴です。
かみのやま温泉 日本の宿 古窯:蔵王連峰の迫力と紅花湯でじっくり山形気分に浸ろう
最後に紹介する宿は、古くは上山城の城下町として栄えたエリアにあるかみのやま温泉から「日本の宿 古窯」です。蔵王連山など、四方を山に囲まれたかみのやま温泉は、南東北の中間に位置しているため山形県、また隣接する宮城県、福島県、新潟県の観光地へのアクセスの良さが強み。
滞在すれば、いまものこる城下町の風情を感じ、山々が作り出す雄大な景色を眺めながら「美人の湯」とも呼ばれる以下泉質・効能の温泉入浴を楽しめます。
泉質・効能
- 泉質
- ナトリウム・カルシウム・塩化物・硫酸塩温泉
- 効能
- 肌の水分と油分のバランスを適切に保つ、肌の表皮細胞の代謝促進など、美肌や皮膚・粘膜の状態を整える効果が期待できる
そんなかみのやま温泉の宿・古窯には、山形らしさを感じられるお風呂として8階の「展望大浴場」と、1階に「紅花風呂」があります。展望大浴場からは蔵王連峰が作り出す四季折々の雄大な景色と、かみのやま温泉街の夜景が、露天風呂から楽しめます。
一方の紅花風呂は、山形の歴史に即した露天風呂。1人入浴用の陶器の樽がいくつも並んだ浴場で、かつて山形産の紅花が京都に運ばれ、京都との文化交流が進んだという歴史にちなみ、この名前がつきました。
お風呂で山形の情緒を楽しんだ後は、地産地消にこだわった食事で山形を味わいましょう。古窯の料理は、山形の山・川・森・海・田んぼでとれる新鮮でおいしい旬の食材を、地元の風土・風景・風味が伝わるよう調理し、お皿に載せたものです。温泉ではお湯と景色から、食事では味覚はもちろん五感すべてを使って、山形県の風情を感じてください。
また、夕食のデザートとして出される古窯特性の「窯プリン」は、和三盆に蔵王の地鶏卵の卵黄をたっぷりと使った、地産地消と和にこだわったおすすめの逸品です。ソフトクリームよりも濃厚という窯プリンの味は、お土産として購入していく宿泊客が続出するほどおいしいのだとか。ぜひ、宿自慢の輪スイーツもしっかり味わってくださいね。
おわりに:レトロな建物や蔵王が作り出す絶景、おいしい地元食材まで山形の温泉と一緒に楽しめる!
自然豊かな山形県は、海沿いも山沿いも美しい景色で溢れています。また、海沿いと山沿いでは手に入る食材にも違いがあるため、同じ県内での温泉旅行であっても異なった食文化を楽しめます。本記事で紹介した5つの温泉地には、それぞれ他の温泉地にない魅力があります。あなたがどんな泉質の温泉に入りたいか、また滞在中にどんな時間を過ごしたいかによって、ベストな行き先を選んでください。
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