多数の温泉地を有する岩手県では、県を縦断するようにして湯めぐりを楽しむのもおすすめです。
そこで今回は岩手県の花巻、森岡、八幡平市(はちまんたいし)、一関(いちのせき)から、湯めぐりと観光・グルメを楽しめる温泉入浴施設を紹介していきます。
花巻市 花巻温泉 佳松園:PH9.0!高濃度アルカリ性のとろとろ美肌湯
まず紹介するのは、花巻温泉のなかでも県木・南部赤松に囲まれた静かなエリアに経つ温泉旅館「花巻温泉 佳松園(かしょうえん)」です。立地もさることながら、客室の設えにおいても日常の喧騒を忘れ、心身を休められるよう配慮された館内では、ゆったりと贅沢な時間を過ごすことができます。
入浴施設には、とろとろとした肌ざわりのアルカリ性温泉を贅沢に使用。
一般的なアルカリ性温泉の㏗が7.5以上であるのに対し、㏗9.0と高い数値を誇る花巻温泉のお湯に、体にやさしく美肌効果が高いのが特徴です。
泉質・特徴
- 泉質
- ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉、低張性アルカリ性高温泉
- 効能
- 関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫、運動麻痺における筋肉のこわばり、胃腸機能の低下、軽度の高血圧・糖尿病・高コレステロール血症、軽度の呼吸器障害、痔、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状、疲労回復、健康増進
大きな洗い場と浴槽、そしてサウナを備える内湯の大浴場と、大きな桶状の檜風呂を備えた露天風呂が男女それぞれに用意されているので、ぜひどちらにも入浴してみてください。
食事では、地元産の旬の海の幸、山の幸を使った懐石料理をいただけるので、おなかも心も満たされ、温かくなるでしょう。また、車で40分圏内と比較的アクセスの良いところに、大人が行って楽しい観光スポットがあるのも佳松園の魅力です。
特に童話作家・宮沢賢治ゆかりの施設や、国産ワインの生産が盛んな岩手県が誇る施設・エーデルワインでの工場見学はおすすめなので、ぜひ行ってみてくださいね。
盛岡市 つなぎ温泉 愛真館:岩手山登山後は開湯900年の深い歴史を庭園縄文風呂で感じよう
続いては盛岡市から、「つなぎ温泉 愛真館」を紹介します。繋(つなぎ)温泉は平安末期、1051年に発生した前九年の役の際に現在のつなぎ温泉近くの山麓に本陣を置いた、源義家が発見したと伝わる温泉です。
温泉を発見した義家は、愛馬が受けた傷をそのお湯で洗い快癒したのを見て、自分も馬を洞穴に繋いで入浴したと言われています。この謂れから「繋温泉」と呼ばれるようになった温泉の、泉質と効能は以下の通りです。
泉質・効能
- 泉質
- 単純硫黄温泉、低張性アルカリ性高温泉
- 効能
- 疲労回復、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、冷え、打ち身、痔、糖尿病、高血圧症、慢性皮膚病、切り傷
そんな繋温泉、愛真館の入浴施設は計18種類のお風呂を備える、非常にユニークなもの。特に象徴的なのは、つなぎ温泉の西部に発見された萪内(しだない)遺跡をモチーフに作られた「庭園縄文風呂」で、遺跡を思わせるアトラクション性の高い入浴を楽しめます。
以下に、愛真館のお風呂の種類と特徴を簡単にまとめましたので、確認してくださいね。
お風呂の種類・概要
しだないの湯
- 露天風呂として、縄文遺跡をテーマにした「ストーンサークルの湯」「木漏れ日の湯」
- 内湯として、高い天井と大きな柱が特徴の「しだないの内湯」
ぬりさわの湯
- 露天風呂として縄文人の竪穴式住居を模した「竪穴の湯」、枕木を配した「夢枕の湯」
- 豪壮な柱と梁から、木のぬくもりを感じられる内風呂「ぬりさわの内湯」
大浴場
- 日替わり風呂、源泉・さえずり檜風呂、南部鉄器風陶器風呂、まごころ露天風呂、泡風呂とサウナを備える「まごころの湯」
- あいの露天風呂、あいの湯、檜風呂、トルマリン風呂、パンダ・カッパ風呂、サウナを備える「あいの湯」
客室は本館、西館、別館のそれぞれに赴きの違ったものがありますが、特に別館の客室からは岩手山、御所湖を望む絶景を見ることができます。岩手山は、別名「南部片富士」の名を持ち、標高が2,038mになる岩手県最高峰の山です。登山シーズンである7月には、コマクサなど群生する美しい高山植物を見ることができるので、岩手山登山と一緒に繋温泉と楽しむと良いでしょう。
八幡平市 八幡平ハイツ:八幡平高原リゾートのマグマの湯!入浴着OKやバリアフリー家族風呂なども
次は八幡平市から、マグマの湯とも呼ばれる八幡平温泉の源泉を使った施設「八幡平ハイツ」の魅力を見ていきましょう。八幡平ハイツは、入浴施設として焼石を配した「露天岩風呂」、檜の香りとともに入浴を楽しめる「檜露天風呂」、室内の「大浴場」と「温泉貸し切り檜風呂」、「森の足湯」を完備。
上記のうち、露天岩風呂と露天檜風呂には八幡平温泉の源泉と井戸水の混合水が、その他の浴槽には源泉がそのまま流し込まれています。なお、八幡平温泉の泉質・効能については、以下を確認してくださいね。
泉質・効能
- 泉質
- 単純硫黄温泉
- 効能
- 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔、冷え、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症
なお八幡平ハイツの大浴場では、バスタイムカバーとも呼ばれる入浴着を着用したまま、大浴場を使うことも可能です。
- バスタイムカバーとは
- 手術による傷痕があるなど、自身の体を他人に見られず大浴場を利用したいときに使われる、特製の湯あみ着のこと
- 衛生面にも配慮したつくりになっており、近年ではレンタルと利用に対応する温泉入浴施設も増えてきている
さらに、さまざまな人数、関係性、事情を抱えた利用客を受け入れられるよう、大きさや趣、施設の違う多種多様な部屋を備えているのも、八幡平ハイツの大きな魅力と言えます。また岩手山など周囲の豊かな自然を眺めたり、中庭での散策を楽しめるなど、どの部屋も自然を身近に感じられるつくりになっているのも特徴です。
一人旅、友人同士のグループや家族での旅、ペット連れでの宿泊に対応する部屋まであるので、どんな人でも自分にぴったり合う部屋をみつけられるでしょう。
なお、西館宿泊棟の1階にはバリアフリー設計の温泉家族風呂付きの客室もあります。身体的な事情から旅行や、大浴場での入浴が難しい場合は、こういった家族風呂付きの客室を選ぶのがおすすめです。
そして、八幡平ハイツがある八幡平は、岩手県と秋田県にまたがって広がる、景観抜群のスポット。1956年には国立公園にも指定されていて、自然が作り出す景色や地形を楽しめる以下のような観光スポットがあります。
- 山頂はもちろん、源田森、花園の黒谷地湿原など見どころの多い「茶臼山」
- ブナやカエデなど、広葉樹の多いエリアを車で走れる美しい道路「八幡平樹海ライン」
- 春は桜、秋は紅葉を楽しめる八万t内明日ピーラインの玄関口「さくら公園」
八幡平ハイツに宿泊するなら周囲を歩き、八幡平が誇る自然観光地も満喫してくださいね。
八幡平市 新安比温泉 静流閣:海水の2倍濃い強塩泉は東北美人と若返りの秘訣
続いても八幡平市から、めずらしい強塩泉の源泉を使った温泉に入れる宿「新安比(しんあっぴ)温泉 静流閣」を紹介します。
ヨーロッパでは「ゾール泉」として知られる強塩泉は、太古の地殻変動により地中に閉じ込められた海水が、長い時間をかけて湧き出した化石海水型の温泉です。
その塩分濃度は、海水のおよそ2倍。この超塩分濃度の高い源泉は、地中にて天然ミネラルをたっぷり吸収しているため、天然の薬湯として地域住民に愛されてきました。
塩分の作用により、高い保温作用を持つ新安比温泉の源泉に期待できる効能は、以下の通りです。
- 効能
- 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔、冷え、疲労回復、健康増進、切り傷、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病
なお、実は静流閣には「金の湯」「銀の湯」という2つの源泉があります。
金の湯と呼ばれる源泉は、淡い黄褐色をした強塩泉。地下900mから自噴し、およそ10%の加水で温度調節したうえ、大浴場にてかけ流しで提供しています。
銀の湯も、金の湯とは異なる源泉ではありながら淡い褐色、強塩泉のお湯が特徴。しかし銀の湯は、家族風呂などの貸し切り利用を想定した「らくらく湯」にて入浴することができます。
ぜひ、すべてのお風呂を利用し、源泉による違いを確かめてみましょう。また北関東の中心にあって、岩手県・青森県・秋田県のいずれへも交通アクセスが良い点も、静流閣の強みです。
以下に岩手県、青森県、秋田県それぞれのおすすめ観光スポットを挙げておきますので、時間が許せば足を伸ばしてくださいね。
静流閣周辺の観光スポット
岩手県
- 日本三大鍾乳洞のひとつで、国の天然記念物である「龍泉洞」
- 冬はスキー、春から秋まではゴルフや牧場散策を楽しめる「安比高原」
青森県
- 江戸時代に築城され、現在も店主や櫓が現存する桜の名所「弘前城」
- その美しさと、乙女の像があることで知られる「十和田湖」
秋田県
- 永遠の若さと美しさのため、泉の水を飲み龍になったとされる辰子像のある「田沢湖」
一関市 山王山温泉 瑞泉郷:お肌と心が潤う硫酸塩泉と絶品の前沢牛を堪能
最後に紹介するのは、一関市から「山王山(さんおうざん)温泉 瑞泉郷」です。山王山温泉は、慈覚大師という僧が暮らしたとされる山王山の望む、山深い温泉地。
64度と高温の源泉はとろっとした感触が特徴で、以下の泉質・効能を有しています。
泉質・効能
- 泉質
- ナトリウム、カルシウム、塩化物、硫酸塩温泉、低張性中性高温泉
- 効能
- 神経痛、筋肉痛、慢性消化器病、冷え、疲労回復、健康増進、切り傷、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、動脈硬化
瑞泉郷では、そんな産能山温泉の源泉を加水なしで適温にしたうえで、大浴場と露天風呂それぞれに注ぎ込んでいます。
お風呂の種類・概要
- 中性からほとんど変わらない自然風景を望める、岩を配した露天風呂「瑞泉の湯」
- 大きくとられた窓から、たっぷりと光が差し込む「大浴場の内湯」
山王山温泉の硫酸塩泉は、肌の汚れを取り磨き上げる、美肌の湯とも言われています。せっかく瑞泉郷を利用するなら内湯ではゆったりと、露天風呂では木々が発する香りと四季折々の景色を楽しみながら入浴して、美と健康を手に入れましょう。
夕食では柔らかい肉質と、霜降りがたっぷり入った岩手県産のA5ランク黒毛和牛「前沢牛」を、さまざまな調理法でいただけます。前沢牛の調理法は、選択する料理のコースにより変わってきます。
肉好きなら県南の名産品であり、全国肉用牛枝共励会で4年連続最高の名誉賞を受賞した前沢牛を多く使ったコースを選び、調理法による味の違いを楽しむのも良いでしょう。
なお瑞泉郷に宿泊し、周辺の観光を楽しむなら、アクセスの良い以下4つのポイントをメインに巡るのがおすすめです。参考にしてくださいね。
瑞泉郷周辺の観光おすすめスポット
- 磐井川の浸食によりできた、2㎞にわたる渓谷美を楽しめる「厳美渓」
- 大正7年創業、現在も丁寧な酒造りを行う酒蔵「世嬉の一酒造」
- 世界文化遺産であり、国宝第一号となった奥州藤原氏ゆかりの寺「中尊寺」
- 境内が国の特別史跡、庭園が特別名勝に指定されている「毛越寺」
おわりに:少しずつ岩手県各地を周って、その土地の温泉と文化を知ろう
日頃生活している場所を離れて温泉旅行へ行くとき、その土地の文化や風土、味に出会うのも楽しみのひとつでしょう。県内各地に温泉地を持つ岩手県でなら、湯めぐりをしながらその土地の歴史や郷土料理に親しみ、違いを比べるという楽しみ方も可能です。本記事を参考に少しずつ岩手県内の温泉地を訪れ、湯めぐりと各地の魅力を堪能しましょう。
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