ナンプラー、ニョクマムなど海外の調味料として知られる魚醤(ぎょしょう)は、日本の一部地域でも親しまれています。
今回は魚醤に期待できる健康効果について、魚醤の作り方・原料や含まれる栄養成分などの情報と一緒に理解していきましょう。旅先のグルメやお取り寄せを楽しむときの参考にしてください。
魚醤ってどんな調味料なの?
大豆の代わりに魚を使い、塩と発酵させて作る調味料全般のことを魚醤と呼びます。魚醤のおおまかな作り方は、以下の通りです。
- 基本的な魚醤の作り方
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- 材料となる魚を用意する。魚の種類には地域差があるが、青魚や小魚が多い。
- 魚の分量に対し、1~3割相当量の塩を加えて保存桶に詰め込み、発酵・熟成を開始。
- だいたい半年~2年、ときどき中身を撹拌しながらしっかり熟成させれば完成。
大量の塩に付け込まれた魚は、発酵の過程でうま味の源であるアミノ酸・魚肉の拡散に分解され、塩味とうま味を併せ持つ魚醤が完成するのです。
代表的なものとしては、タイのナンプラーが挙げられるでしょう。
ナンプラーは、カタクチイワシを7か月から1年ほど熟成させて作る、とろみが特徴的な魚醤です。
現在では東南アジアのイメージが強い魚醤ですが、日本でもたくさんの種類の魚醤が製造・販売されています。そのうち、日本三大魚醤とされる代表的な種類は以下の3つです。
- 《日本三大魚醤1》秋田県の「しょっつる」
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- 主な材料としてハタハタを用いる
- ハタハタだけを使ったしょっつるは、クセや臭みのないすっきりした味わいが特徴とされる
- 《日本三大魚醤2》香川県の「いかなご醤油」
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- いかなごをメインの材料として用い作られる魚醤
- 脂ののる旬の時期にいかなごを漬け込み、うま味とコクを溶かしこむ
- 一度消滅したが、1990年代に復刻された
- 《日本三大魚醤3》石川県の「いしる」
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- 「いしり」と呼ばれることもある魚醤
- メインの食材はスルメイカの内臓
- 腐敗しにくい冬に仕込み、2年間熟成して加熱・ろ過をして仕上げるのが特徴
なお日本の魚醤は、東南アジアの魚醤に比べて全体に熟成期間が長い傾向があります。
魚醤の栄養に期待できる効果って?
魚から作られるナンプラーは、一般的な醤油とは異なる以下のような栄養を含んでいます。
- 細胞をつくる原料となる
- 動物性タンパク質とアミノ酸
- 骨を強くしたり、血流促進や貧血の予防に役立つ
- 鉄分、カリウム、カルシウムなどのミネラル類
- 皮膚や粘膜を整えて強くし、体を疲労や病気から守る
- ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン類
上記はいずれも私たちの生命と健康維持に役立つ成分ですが、特に注目すべきは魚醤に含まれるアミノ酸の一種・タウリンです。
タウリンには血圧の正常化、肝機能の強化・向上による疲労回復、脳をリラックスさせることによる精神の安定、認知症予防効果が期待できるとされます。
タウリンによる認知症予防効果
認知症のうち「アルツハイマー型認知症」は、脳内にアミロイドβやグルタミン酸受容体アゴニストが蓄積し、刺激を与えることで発症すると考えられています。
タウリンには、これらの有害・有毒物質から脳を守り、アルツハイマー型認知症を予防・改善する作用があると期待されているのです。
これらの健康効果は、魚醤を摂取したからと言ってすぐに実感できるものではありません。
しかし、継続的に魚醤を摂ることで、少しずつ確実に積み重ねることができるでしょう。
魚醤が減塩にも役立つ?
魚醤は同量の大豆醤油と比較すると塩分濃度が高いですが、同時に、動物性タンパク質特有のうまみとコク、風味を持っているのが特徴です。
このうま味を上手に利用すれば、大豆醤油よりも少ない量で充分な味付けをすることができます。つまり、魚醤は栄養満点なだけでなく、減塩調理にも役立つ調味料なのです。
しかし、魚醤には独特の生臭さもありますよね。この生臭さが苦手なために、魚醤を敬遠している人も多いのではないでしょうか。
魚醤独特の風味・生臭さは、熱を加えることで飛ばすことができます。
うま味・栄養だけを摂りたいときは、炒め物や煮物に魚醤を使って、独特の風味を飛ばしてしまうのが良いでしょう。
おわりに:魚醤は、醤油にない栄養や健康効果を持つ調味料!
魚やイカの内臓など、魚介類と塩を原料に作る調味料を魚醤と言います。醤油に近いしょっぱさですが、独特の風味と動物性タンパク質が生み出すコクがあるのが特徴です。醤油に比べると塩分濃度が高いですが、少ない量でも十分に味付けできるため、減塩調味料としても有効。独特の生臭さが苦手な場合は熱を入れて臭みを飛ばし、タンパク質・タウリン・ビタミン・ミネラルなどの豊富な栄養成分を摂取してくださいね。
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