クエは、フグやカニと並び冬の味覚としてイメージされる高級魚の代名詞ですよね。
今回は味、栄養、おすすめの食べ方などの基本情報から、主な産地や養殖事情にいたるまで、高級魚クエについて学んでいきましょう。
クエは幻の高級魚と呼ばれるほど貴重な魚!1kg当たり1万円以上も
漢字で「九絵」と表されるクエは、スズキ目スズキ亜目ハタ科ハタ亜科マハタ属の魚です。
日本近海にも棲む海水魚で、若魚のときに体に不規則な紋があるためこの名が付いたとされますが、地域によって呼び名は以下の様に異なります。
- クエの別称
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- 九州…アラ
- 三重…マス
- 伊豆諸島…モロコ
- その他…マグエやサイゴ、ホングエ、キョウモドリ、クエマス、オオウオ、イギス、アオナ など
クエの特徴は、皮の色が茶褐色、大きな頭と口、成魚の側面にある濃い茶色で太い6本の横縞があることです。天然ものの漁獲量が非常に少なく稀少価値が高いこと、また同じハタ科の他の魚に比べて味が良いことから、高級な魚として知られています。
また成長に時間がかかるため、大型の個体ほど値がつり上がることも特徴であり、時期や大きさによっては、市場での取引価格が1㎏あたり10,000円以上になることもあります。
クエとよく似ているマハタとの見分け方
クエと混同されやすく、見た目が似ている魚に「マハタ」が挙げられます。
以下に、クエとマハタを見分けるポイントを紹介していますので、参考にしてください。
- クエの特徴
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- 全体的に体が茶色で、6本の横縞が入っている
- 横縞のうち顔に近い2本が、頭の方へ流れている
- マハタの特徴
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- 全体的に小豆色をしていて、顔の近くの横縞もまっすぐ下へ伸びている
- 尾びれに近い箇所の横縞が2本、つながっているように見える
- クエとマハタの見分け方
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- 全体的に茶色っぽく、顔の近くの横縞が頭の方へ向かっているのがクエ
絶品といわれるクエの味や栄養って?おすすめの食べ方は?
クエの身は、しっかりと脂が乗っていながらも上品で、深みのある絶品の白身です。見た目はタイやフグに似ていて、程よい甘さと歯ごたえがある繊細な味わいで、「クエを食べたら他の魚は食えん」という言葉があるほど、おいしいとされます。
また、クエは身だけでなく、皮や頭、骨まわりなどアラの部分など、他の魚では捨てられてしまいがちな部位も非常においしく、なめらかな食感を楽しめます。
クエに含まれる栄養素と健康効果
クエはおいしいだけでなく栄養も豊富な魚です。
クエに含まれる代表的な栄養素と期待できる健康効果は、以下の通りです。
- タンパク質
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- 髪や筋肉、細胞の材料となる人間に必要な三大栄養素のひとつ
- クエは他の魚や肉と比べても脂肪分が少なく、タンパク質の高い高栄養食材とされる
- コラーゲン
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- 身の他、皮などゼラチン質の部分に多く含まれる栄養素
- 血管の柔軟性を高める他、骨粗鬆症や皮膚炎の予防、髪質改善などの効果が期待できる
クエの栄養を活かす食べ方
クエをおいしく、その栄養を余すところなく食べたいなら、鍋にするのがおすすめです。昆布だしに塩、酒だけでシンプルに味付けをしたらクエと他の具材を入れて煮込み、身はもちろんですが、汁に溶けだしたコラーゲンまで飲み干ようにしてください。
鍋以外であれば、刺身にして食べるのがおすすめです。血合いが少ないクエの身は透明感があり、薄造りにするとフグと見間違う美しさ。背の部分からは程よい甘味とうま味を、腹の部分ではコク深い味わいを楽しめます。
脂の乗りが不十分な小型のクエの場合は、フライや唐揚げにして油分を補いましょう。クエの上品な身で、絶品の白身魚フライを楽しめます。なお大型のクエも、頭の部分を二度揚げにするとおいしくいただけます。
和歌山県や九州がクエの名産地!
天然ものと養殖もの、それぞれのクエが多く獲れる名産地は以下の通りです。
- 天然クエの名産地
- 和歌山県、三重県、高知県、長崎県、など南日本の太平洋側の沿岸
- 養殖クエの名産地
- 和歌山県、三重県、静岡県など
稀少な天然もののクエを食べたいなら、上記の天然クエの名産地に行くと良いでしょう。水揚げ状況によっては食べられない可能性もありますが、産地の高級料亭なら、入荷さえあれば都市部よりもかなりリーズナブルにクエを食べられます。
クエの養殖には時間がかかる?近畿大学が養殖に成功!
あまりエサを食べないために成長が遅く、出荷に適した70~80㎝の体長になるまで10年かかるとされるクエは、養殖するには課題の多い魚だといわれてきました。一方で食材としての需要が高く、高値で取引されることから、日本においては1970年代後半より近畿大学水産研究所で養殖研究が開始されています。
はじめは自然界から成魚を集めて親魚を作り、1988年には人の管理下で産卵させ、人工孵化させるところまでは成功しましたが、稚魚の安定的な生産や成長にかかる期間の劇的な短縮にはなかなか至りませんでした。
2016年になり、近畿大学水産研究所がクエの養殖に成功します。近畿大学は食えを同じハタ科の大型魚である「タマカイ」と掛け合わせて「クエタマ」とし、年間を通して気候が温暖な奄美大島で育成することで成長にかかる時間を大幅に短縮することで、従来より4倍近く早く成長し、しかも原種のクエと比較しても劣らない味わいの養殖魚を誕生させたのです。
近畿大学発のベンチャー企業アーマリンが養殖クエをオンラインで販売中
近畿大学水産研究所は2003年2月、研究所独自の養殖技術で卵から育てた安心でおいしい魚を多くの消費者へ販売するため、株式会社アーマリン近代を設立しました。
株式会社アーマリンの社名は、安心の頭文字である「A」と海を意味する「マリン」、そして研究所の母体である近畿大学の略称からとったものです。養殖業者に対し、近畿大学が生産したクエ、マダイ、シマアジ、トラフグ、クロマグロなどの稚魚の販売を行っています。
また一般消費者向けに、通販サイトも設立。冬季のみ、養殖したクエを「近代本クエ」として数量限定で販売しています。なお通販サイトでは、同じく近畿大学水産研究所で管理・育成した近代キャビアや近代マダイなど、近代が養殖した魚介類を購入することもできますよ。
おわりに:天然ものに加え、近代が開発した養殖クエもまだまだ稀少!
非常に漁獲量が少なくおいしいことから、幻の高級魚と呼ばれるクエ。成長速度が遅いため養殖が難しいと言われる魚でしたが2016年、1970年代から研究を続けていた近畿大学水産研究所が初めてクエの養殖に成功しました。現在は天然ものの他、近畿大学水産研究所が設立した株式会社アーマリンの通販サイトにて、期間と数量限定で養殖クエも購入できます。まだまだ稀少な養殖クエですが、興味があるなら時期を合わせて購入してみましょう。
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