日本で古くから料理のとろみ付けや、和菓子の食感を変えるなどの用途で使われてきた葛は、漢方薬にもなる植物です。
今回は葛に含まれている栄養や期待できる健康効果、代表的な用途、薬としての効果などをまとめてご紹介します。旅先のグルメやお取り寄せを楽しむときの参考にしてください。
葛(くず)ってどんな植物なの?
正式な和名を「クズカズラ」という、マメ科クズ属の多年草です。
生命力・繁殖力ともに非常に強く、夏の終わりから秋のはじめにかけて10m近くもツルを伸ばし、赤紫色の花をつけます。
東アジア・東南アジアの温かい地域に広く分布しており、日本でも全国の日当たりの良い山野で自生が見られます。このため、秋の七草として広く親しまれてきました。
日本で葛の名産地として最も有名なのは、奈良県の吉野郡。
吉野郡には国栖(くず)という地名があり、一説には、この周辺地域の名産であったことから「葛」とよばれるようになった、とも言われています。
葛はいずれの部位も生活に利用されてきましたが、最も珍重されてきたのは根の部分です。
- 部位別、葛の利用方法の例
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- 葉:家畜の餌
- 若葉:食用、またはお茶の材料
- 花:悪酔い予防として酒に入れて飲む
- 根:でんぷんは本葛、繊維は衣服の材料、葛根(かっこん)として薬の材料に
30年ほど育てた葛の根を何度も水にさらし、砕き、繊維質と分離させてでんぷんだけを取り出し固めたものは「本葛」として、昔から料理・和菓子の材料に使われてきました。
水分を固め、料理にとろみやプルプルした食感、つるっとしたのど越しを加えてくれる本葛は、くずもちやくずきり、葛湯を作るのに欠かせない食材だったのです。
また近年では日本料理・和菓子だけでなく、西洋料理の材料や、食べやすいようとろみをつける必要のある介護食・離乳食の材料としても活用されています。
葛の栄養と期待できる効果って?
葛には、以下の作用を持つ栄養成分がそれぞれ豊富に含まれています。
でんぷん
- 体や脳を動かすのに必要なエネルギー源となる
- 葛の根から精製された本葛は、胃腸で消化されやすいためおなかにやさしく、効率的なエネルギー摂取に役立つ
イソフラボン
- 大豆に多く含まれることで知られ、マメ科である葛にも豊富に含まれている
- 骨粗鬆症予防、更年期障害の軽減、ホルモンバランスの調整、コレステロール値の上昇抑制作用が期待できる
フラボノイド
- ポリフェノールの一種
- 細胞の劣化・老化を防ぐ抗酸化作用がある
- このためアンチエイジングや美容、血管機能の維持・向上、消化器機能の向上、コレステロール値の上昇抑制などの作用が期待できる
ダイゼイン
- イソフラボンの一種
- 体の痙攣、細胞のがん化を防ぐ作用が期待されている他、マウスへの実験では女性ホルモンの分泌量向上の作用も確認されている
また、葛の根を葛根という漢方薬として利用・服用する場合には、以下のような薬効が得られることが分かっています。
食材としての葛の栄養・健康への効果と合わせて、薬効も覚えておいてくださいね。
- 葛の根、葛根の漢方薬としての効果
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- 風邪で熱があるときには、熱を下げて平熱に近づける
- 体が冷えて体調が悪くなりそうなときは、体を芯から温める
- 風邪のひき始め、ちょっとした体調不良の回復に役立つ
- 夏の暑さ、水分の摂りすぎで弱った胃腸の調子を整える
- 首筋から肩、肩甲骨のあたりにかけての緊張・コリ・痛みを和らげる
- 風邪や夏バテで胃腸が弱っているときの栄養補給、食欲増進
おわりに:葛には体を温め、健康と美容を助ける効果がある
マメ科の植物である葛は、日本で古くから料理のとろみづけ、くずもちやくずきりの材料として使われてきました。イソフラボンやフラボノイド、ダイゼインなどマメ科特有の栄養成分を多く含み、細胞の劣化防止や血管機能向上など健康・美容への効果が期待できる食材です。
また根の部分は、風邪のひき始めやちょっとした体調不良、体のこわばりを改善する漢方薬「葛根」としても知られています。毎日の料理やおやつに取り入れてみましょう。
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